矢野経済研究所は植物工場運営市場における調査を行い、その調査結果を発表した。それによると植物工場市場は順調に成長し2025年には1500億円市場となるという。
矢野経済研究所は2014年2月14日、国内の植物工場運営事業市場について国内市場規模と今後の市場推移・予測を発表した。それによると、植物工場運営市場は順調に成長を続けると見られ、2025年には合計で1500億円市場に成長すると予測している。
植物工場は、施設内の光、CO2濃度、培養液などの環境を人工的に制御し、計画生産を行うことができる施設のことだ(関連記事:レタスを作る半導体工場!? 植物工場は製造業を救う切り札になるのか)。植物工場には農業としてのノウハウとともに製造業として工場運営を行うようなノウハウが必要で、製造業の工場転用などでも注目を集めている。
植物工場には完全密閉された空間で人工光を利用する「完全人工光型植物工場」と、施設内で太陽光を利用しながら人工光で補光する「太陽光・人工光併用型植物工場」、また人工光を導入していない「太陽光利用型植物工場」がある。調査期間は2013年7〜12月。完全人工光、併用型、太陽光利用型植物工場運営企業などを対象に、直接面談や電話/電子メールによるヒアリングなどを実施した。今回調べた植物工場運営事業市場とは、国内の植物工場で生産販売された作物の市場規模であり、国内流通量を出荷金額ベースで算出したという。
調査によると、完全人工光型植物工場の2013年の国内市場規模は33億9600万円(見込み)だという。同市場においては2009年時の約2.5倍に当たる企業・工場が作物の生産・販売事業を行っており、参入が活発化していることが見える。また、生産品目はリーフレタス類が中心であるが、生鮮機能性野菜や健康食品などの原料生産、イチゴや結球レタスの実用化など、生産作物の多様化の傾向も見え始めているという。さらに、蛍光灯を利用するものから、LED照明の採用も増えているという。
太陽光・人工光併用型及び太陽光利用型の2013年国内植物工場運営事業市場規模は199億1900万円(見込み)だという。併用型では主にリーフレタスを始めとした葉菜類など、一方の太陽光利用型は主としてトマト、パプリカ、イチゴなど果菜類、またホウレンソウ、レタス類などの葉菜類が生産されている。
今後は、国内の完全人工光型運営事業市場は、2015〜2016年のLED植物工場の本格普及により飛躍期を迎え、2015年に131億9000万円まで拡大すると同社は予測している。同時期には、低コスト化や生産作物の多品種化、省エネ・創エネ施設の併設、海外展開などが進展することも期待されており、その後、低カリウム野菜・果物など機能性野菜市場が発展することと合わせ、2018年には200億8200万円となる見込み。さらに2020年から2025年にかけて生薬、医薬品原料など超高付加価値製品市場の発展期に入り、2025年には443億3800万円まで拡大すると予測している。
一方、国内の併用型及び太陽光利用型植物工場は、国による次世代施設園芸事業の推進政策を受け、民間企業からの積極的な参入が見込まれている。今後、太陽光利用型市場は大規模工場建設の増加、また併用型市場については、太陽光利用型工場への人工光導入による補光などで発展すると見られ、併用型及び太陽光利用型植物工場の国内運営事業市場規模は2015年270億5200万円、2020年814億1400万円、2025年1056億9000万円と拡大していくと同社は予測している。
しかし、植物工場運営における課題はまだまだ大きい。同社では、植物工場のさらなる発展について「高騰するエネルギーコストに対する課題解決が重要である」と指摘する。
具体的には「完全人工光型では電気代の抑制、また太陽光利用型では暖房用の燃料費やCO2コストの削減が必要だ」としている。特に完全人工光型は「製品の品質及び品ぞろえと価格のバランスで、現状の市場ニーズに十分に対応できていない」という課題を持っており、手法面や機器・技術面の発展によるこれらの解決に期待が寄せられている。
「国内市場の縮小」「生産による差別化要素の減少」「国内コストの高止まり」などから、日本の生産拠点は厳しい環境に置かれている。しかし、日本のモノづくり力はいまだに世界で高く評価されている。一方、生産技術のさらなる進歩は、モノづくりのコストの考え方を変えつつある。安い人権費を求めて流転し続けるのか、それとも国内で世界最高のモノづくりを追求するのか。今メイドインジャパンの逆襲が始まる。「メイドインジャパンの逆襲」コーナーでは、ニッポンのモノづくりの最新情報をお伝えしています。併せてご覧ください。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.