最先端IT・エレクトロニクスの展示会である「CEATEC JAPAN」だが、自動車や新エネルギー関連の出展の陰でひそかに増えているのが農業関連ソリューションだ。TPPなどで農業強化に注目が集まる中、IT・エレクトロニクスは農業を救えるのか。CEATEC JAPANでの農業関連の出展を紹介する。
TPPなどにより日本の農業強化に大きな注目が集まっている。しかし日本における農業は衰退が進んでいる。農林水産省によると、農業の国内生産額は1990年の13.7兆円をピークに減り続け、2011年には9.5兆円まで減少。また、農家の数は1960年には606万戸あったとされるが、2009年には170万戸まで減少している。
一方で、食料自給率は40%を切り、輸入食材に頼る状況が続く。就農人口が減少する中で、生産量の向上を図るためには、生産性を向上することが必須となる。この1つの手段としての注目を集めているのが、ITやエレクトロニクス技術を活用した新たな農業だ。「CEATEC JAPAN 2013」(2013年10月1日〜5日、幕張メッセ)でも、幾つかの農業関連ソリューションが出展された。
富士通は、福島県会津若松市の半導体工場のクリーンルームを転用した植物工場ビジネスについて紹介した。同社では、富士通セミコンダクター会津若松工場で半導体生産を行っていた建屋一棟を植物工場とし、腎臓病患者に需要の高まっている低カリウム野菜を栽培することを2013年7月に発表(関連記事:富士通が野菜を作る!? ――半導体のクリーンルームを転用した植物工場を設立)。
現在は2014年2月の本格量産開始に向けて生産環境の整備を進めているところだという。クリーンルームをそのまま利用し、生産設備の設置面積は2000m2。フル生産すれば1日に低カリウムレタス2400パックの生産が行えるようになる。現在はその販路開拓に取り組んでいるところだという。
植物工場の運営や低カリウムレタスの販売を行う富士通ホーム&オフィスサービスの先端農業事業部で、営業部 担当部長代理を務める森廣樹氏は「以前はコンピュータの販売を行っていたが、今はレタスを売っている。フル生産できれば、2年間で回収できる計画だが、そのためにもっとも重要なのは販路。今は販路開拓に全力を注いでいる」と力を込める。
同植物工場の管理システムとしては、富士通が2012年10月にリリースした、農業・畜産業向けのクラウド型基幹サービス「Akisai」(秋彩)を利用。Akisaiはクラウド型の農業管理システムで、経営管理や生産管理、販売管理、出荷管理などを行える他、タブレット端末やスマートフォン端末から情報確認ができ、移動の無駄を削減することが可能だ。Akisaiの活用により植物工場の効率的運営を進めていくという。
Akisaiは、今回のCEATEC JAPANで行われた米国ジャーナリストによる「米国メディアパネル・イノベーションアワード 2013」の「Smart Community部門賞」を受賞。Akisaiは、昨年のCEATEC JAPANでは、「CEATEC AWARD 2012」の「総務大臣賞」も受賞しており、2年連続でCEATEC JAPANでの賞を獲得したことになる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.