2013年9月19日、マイクロソフトのモーションセンサーデバイス「Kinect for Windows」を活用したアプリケーション開発コンテスト「Kinect for Windows Contest 2013」が開催された。本稿では、コンテストの結果と入賞作品の概要を紹介する。
――2013年9月19日、マイクロソフトのモーションセンサーデバイス「Kinect for Windows」を活用したアプリケーション開発コンテスト「Kinect for Windows Contest 2013」(主催:東京エレクトロン デバイス)が開催された。本稿では、コンテストの結果と各入賞作品の概要を中心に紹介していく。なお、次回で各作品のプレゼンの模様をお伝えする予定だ。
本題に入る前に、簡単にKinect for Windowsを取り巻く環境、現状について触れておきたい。
Kinect for Windowsが登場したのは、2012年2月のこと(関連記事1:商用利用可能な「Kinect for Windows センサー」出荷開始!)。ご存じの方も多いと思うが、Kinect for Windowsは、家庭用据え置き型ゲーム機「Xbox 360」のオプションコントローラ「Kinect」がベースとなっている。無償提供されている専用SDK(Software Development Kit)「Kinect for Windows SDK」を用いることで、Windows OS(組み込みシステム向けの「Windows Embedded Standard」も対応)上で動作する商用アプリケーションを開発できる。余談だが、Kinect for Windowsが登場する前は、Xbox 360用のKinectを用いた“Kinectハック”が話題となったが、Xbox 360用のKinectをPCに接続する利用は非商用が前提で、商用化は許可されていなかった。
Kinect for Windowsは、Windows OS環境で利用できるとはいえ、ゲームの世界から生まれたセンサーデバイスである。そのため、当初はエンターテインメント系のアプリケーションが中心になるかと思われたが、意外にも国内の、特に組み込み業界での動きは早く、発売以来、展示会などでさまざまなコンセプト(応用イメージ)が示されてきた。その中でも先行している分野の1つが小売業だ。具体的には、大きなディスプレイを備えたデジタルサイネージとの連携例が多くみられた。Kinect for Windowsを活用することで、単なる広告や情報の配信だけではなく、利用者とのインタラクティブな情報のやりとりが可能となる。ミニゲームでクーポンを発券するものや、衣料品店向けのバーチャル試着システムなども実現されつつある(関連記事2:「歩いた床が燃える」「描いた絵が水槽を泳ぐ」――体験型デジタルサイネージ最新事情)。
Kinect for Windowsが活発に利用されている背景には、大きく2つの理由が考えられる。1つは入手性の良さだ。高価なモーションセンサーデバイスと同等レベルの性能・機能を保持しながらも2万4800円(税込)と非常に低価格であり、個人でも気軽に手が届く点は大きい。もう1つは、SDKのバージョンアップにより、さまざまな機能が追加され、それらを気軽に利用できる開発環境の優位性にある。特に、SDKのバージョン1.7で追加された「Kinect Fusion」は興味深い。一言で言うと、Kinect for Windowsで取得した深度情報から物体などの形状をリアルタイムに3Dモデル化する技術である。最新のバージョン1.8では、このKinect Fusionがさらに進化し、色情報の取得も可能になった。これにより、フルカラーの3Dモデルをリアルタイムにスキャンできるようになったわけだ。
以上のように、盛り上がりをみせるKinect for Windowsだが、商用アプリケーションとして、具体的に“ビジネス化”しているケースはまだ少ない。実際のところ、比較的進んでいる小売業でも実証試験や試験導入の段階が多く、ビジネスに直結するような幅広いアイデアが求められているのが現状といえるだろう。
そんな要求に対し、東京エレクトロン デバイスは、昨年(2012年)、Kinect for Windowsを活用したアプリケーションやサービスのアイデアを具現化し、実際の製品・サービスとして普及させることを目的とした「Kinect for Windows Contest」を開催。アイデアとビジネスを結び付けるという同コンテストの目的の通り、第1回大会のグランプリを獲得した東洋大学 メディカルロボティクス研究室の作品「Kinectによる側弯症計測システム」は、製品化に向け開発が進められていると聞く(関連記事3:予想外にハイレベル!! Kinect for Windows センサーでここまでできる)。
あれから1年――。2013年9月19日、第2回大会となるKinect for Windows Contest 2013が開催された。今回、グランプリの座を懸けて戦ったのは、予選審査を勝ち残った全10作品(チーム)。前回大会ではアイデアレベルでも(デモ動画がなくても)参加できたが、今大会はデモ動画の提出を必須とし、「より実現性の高い作品を募った」(大会関係者)という。その結果、エントリー数58人、作品応募数32作品が集まり、一次審査により優秀な10作品に絞り込まれた(表1)。
NO. | チーム名(参加者名) | 作品名 |
---|---|---|
1 | TME | 簡易疲労度測定システム |
2 | ヨシダチーム | ツミキスカイタワー |
3 | リサーチキング | 自律巡回 Kinect警備ロボ Pochi Mk-II |
4 | four-dee | face4D(フェイスフォーディー) |
5 | 三木大輔氏 | Kinectを用いた腹腔鏡下手術支援システム2013 |
6 | カモス | アドマエストロ |
7 | 上田智章氏 | 非接触バイタル・センシング(呼吸と心拍) |
8 | 稲葉洋氏 | 医薬品監査システムの開発 |
9 | RehAct®研究会 | 高齢者遠隔運動指導・管理モデルRehAct® |
10 | anno lab | あの体を使って遊べるアトラクション型ゲーム集 |
表1 「Kinect for Windows Contest 2013」の決勝大会に進出した10チーム(プレゼン順) |
審査は昨年と同様、「実用性」「独創性」「将来性」「操作性」「完成度」の5つのポイントが問われる。その中で、独創性と将来性で高い評価を得た作品に「アイデア賞(賞金10万円)」が、操作性と完成度で高い評価を得た作品に「技術賞(賞金10万円)」が、そして、全てにおいて優れた作品に「グランプリ(賞金100万円)」が贈られる。
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