チャデモ方式のEV用急速充電器ついては、国内では政府の支援策を契機として、普及に弾みがつきそうである。チャデモ協議会の多田氏が述べたように、2014年度末には国内の設置台数が6000台規模まで到達するかもしれない。また、国内と比べて遅れているものの、欧米でも普及が進んでいるようだ。2013年度末までに、欧州と米国でそれぞれ1000台程度まで設置されるとなれば、かなりの普及度合いではなかろうか。
急速充電器は、普及の初期段階では、まず人目につきやすいシンボル的な場所(公共施設の入り口近くなど)に設置される。つまり、チャデモ方式の急速充電器は、後発のコンボ方式よりも知名度の点でも優位に立つこととなる。さらに、今秋にはIECの国際規格(IS)として登録されるのも朗報と言えるだろう。
一方、コンボ方式の急速充電器の開発は、さまざまな情報を勘案したところ、やや遅れ気味のようだ。ドイツ企業を中心に開発を進められていることもあり、正確なところは分かりにくいが、実証試験に関する報告などが耳に入ってこないことも気になるところだ。さらに、チャデモ協議会のような統一推進団体がまだ存在していないようなので、相互互換性(Interoperability)に関する不透明さも、ユーザーにとっては気掛かりな要因になるだろう。
欧米の急速充電器メーカーは、チャデモ方式とコンボ方式の併用を想定したデュアルアーム方式を検討している。しかし、コンボ方式の仕様が固まらないと実際には動けないのではないだろうか。しばらくは、コンボ方式の急速充電に対応するEVの台数が限定的であることを考えると、デュアルアーム方式の登場もかなり遅れるように思われる。
現段階の結論として、「チャデモvs.コンボ」として騒がれた急速充電規格の争いで、チャデモが負けることはないと言えるだろう。
コンボ方式はまだ実体がなく、最近では2018年から本格普及を目指すという話が出てくるなど、取り組みは後退しているように見える。充電インフラは、自動車メーカーのみならず、地元の自治体や企業と一緒になって設置していくものであり、一度据え付けるとなかなか変更し難いものだ。それだけに、既に規格内容が定まっており、日米欧で多くの台数が設置されているチャデモの優位性は動かないのではなかろうか。もちろん、チャデモには、今後の普及/拡大のみならず、使い勝手などユーザー視点に立った改良も続けていただきたい。
普通充電器の設置台数も増えているようだ。台数がさらに増加するにつれ、海外メーカー製品も日本に入ってくるかもしれないが、EVPOSSAが中心となって安全性や信頼性に十分吟味を図ってほしい。
そして、充電インフラの普及に関する日本の成功体験は、海外市場でも役に立てられるのではないだろうか。
和田憲一郎(わだ けんいちろう)
1989年に三菱自動車に入社後、主に内装設計を担当。2005年に新世代電気自動車の開発担当者に任命され「i-MiEV」の開発に着手。2007年の開発プロジェクトの正式発足と同時に、MiEV商品開発プロジェクトのプロジェクトマネージャーに就任し、2009年に開発本部 MiEV技術部 担当部長、2010年にEVビジネス本部 上級エキスパートとなる。その後も三菱自動車のEVビジネスをけん引。電気自動車やプラグインハイブリッド車の普及をさらに進めるべく、2013年3月に同社を退社して、同年4月に車両の電動化に特化したエレクトリフィケーション コンサルティングを設立した。
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