スズキは、国の法令に沿わない不正な方法で走行抵抗値を測定した車種の燃費に関して、社内で正規に測定し直した結果を公表した。正規の走行抵抗値を用いた燃費は、不正な測定手法による走行抵抗値に基づいて発表してきたJC08モード燃費より平均で1.6%良好だった。つまり、正しく測定していればもっと良好な燃費を発表できていたことになる。
スズキは2016年5月31日、国土交通省で会見を開き、国の法令に沿わない不正な方法で走行抵抗値を測定した車種の燃費に関して、社内で正規に測定し直した結果を公表した。正規の走行抵抗値を用いた燃費は、不正な測定手法による走行抵抗値に基づいて発表してきたJC08モード燃費より平均で1.6%良好だった。つまり、正しく測定していればもっと良好な燃費を発表できていたことになる。同社 会長の鈴木修氏らは「法令に沿わない業務を続けてきたことは不正だ」と認めつつも、燃費を良く見せるために法令を無視したわけではないという姿勢を貫いた。
同年5月18日の会見で、スズキは法令違反の手法で走行抵抗値を測定して国に申請したのは全モデル16車種だと述べた。しかし、5月31日までの社内調査の結果、スズキの車種としては「ジムニー」「ジムニーシエラ」「エスクード2.4」を除く14車種214万台で、マツダや日産自動車、三菱自動車にOEM供給している12車種も含め26車種に上ると説明した。
今回の会見では、スズキが取り扱う14車種の燃費最良グレードについて、正規の手法で測定し直した走行抵抗値に基づく本来のJC08モード燃費を公開した。この結果、法令違反の手法による走行抵抗値で測定し現在公表している燃費に対し、全てのグレードで法令違反ではない本来のJC08モード燃費の方が良好な結果になったという。
法令違反の手法で得た走行抵抗値で測定した燃費と比較すると、14車種の平均で本来のJC08モード燃費の方が1.6%上回って良好だった。最も差が大きかったのは2011年に一部改良した「アルト エコ」の二輪駆動/CVT搭載モデルで5.3%、差が小さいモデルは二輪駆動/CVT/エネチャージ搭載の「アルト ラパン」で0.3%上回っていた。
鈴木修氏をはじめとする経営陣は「走行抵抗値を法令違反の手法で測定したのが不正であるのは間違いない。しかし、本来のJC08モード燃費の方が良好だったという結果から、われわれに燃費を良く見せる意図はなかったことを理解していただきたい。お客さまに乗っていただく上で問題はなく、生産と販売を中止する考えもない」と繰り返し説明した。
国土交通省は「あくまでこの数値はスズキの測定によるものであって、客観的に検証する必要はある。しかし、三菱自動車の一件のように国として全て測定し直すのは難しい。現実的な検証手法を検討する」としている。
上記の14車種は、相良テストコースに強風対策を施した上で、惰行法で走行抵抗値を測定し直した。相良テストコースは、5月18日の会見で国が定める惰行法で走行抵抗値を測定しなかった要因の1つとして挙げられていた。強風の日が多く、正確に惰行法を実施するのが難しい環境だったためだ。
具体的な対策としては高さ3m×長さ850mの防風壁を設置し、路面の改修も行った。また「天候に恵まれ、無風で惰行法に適した気温の日が続いた」(同社 社長の鈴木俊宏氏)のも、惰行法の実施に寄与した。
同社はさらに改修を進め、風の影響を排除した状態で惰行法を行えるようテストコースの環境を整えていく計画だ。また、測定条件を詳細に管理するなどの測定技術の向上を図っていくという。
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