スズキの経営陣は、国が定める惰行法を使わず、独自の手法で走行抵抗値を測定して国に申請し続けたことは「法令違反で、企業として不正な体制だった」と繰り返し謝罪した。
スズキが法令違反の独自手法を採用し続けてきたのは、その測定方法が“十分な精度だから型式認証の取得でも通用する”と現場のエンジニアに思わせる根拠を持っていたためだ。
本来は、加速してからギアをニュートラルに入れ、車両が規定の速度まで減速する惰行法という試験で惰行時間を計測し、「(1.035×試験車重量)÷(0.36×平均惰行時間)」という計算式に当てはめて走行抵抗値を算出する必要がある。
型式認証の取得では、惰行時間と走行抵抗値の両方を届け出なければならない。
同社が法令を無視して行ってきた走行抵抗値の測定方法は次のようなものだ。風洞試験室で測定した空気抵抗と、タイヤの転がり抵抗、ブレーキの引きずり抵抗、ホイールベアリングの回転抵抗、サスペンションのアライメントの影響、トランスミッションの回転抵抗を部品単位で測定した転がり抵抗を合算し、走行抵抗値としていた。
惰行時間は、上記の計算式と走行抵抗値を基に逆算して届け出ていたという。結果としてスズキの法令違反の手法は、本来の正規の値よりもJC08モード燃費が若干悪く出る走行抵抗値が得られるものだったといえる。
スズキは、生産/販売を継続する根拠として以下の項目を挙げた。
スズキによると、部品単位で転がり抵抗を測定するのは欧州での認証で取り入れられている手法である。
欧州では、代表的な仕様の走行抵抗値を惰行法で測定すれば、同じモデルの他グレードの走行抵抗値は部品単位の測定結果を基に計算して補正することが認められているという。スズキは2010年から欧州市場向けの「スイフト」でこの手法を実施していた。
同社 副社長で技術統括の本田治氏は、「現場のエンジニアは『部品単位での転がり抵抗の測定は正確な数値として欧州で認められている』と考え、日本でも通用するだろうと捉えるようになった」と説明した。
風の影響を受けやすい相良テストコースでは惰行法を実施しにくかったという環境も、部品単位で計測した転がり抵抗値を使う法令違反の手法に走らせた一因となったようだ。
同社は今後、再発防止策として、型式認証の申請に必要な書類を作成する「技術管理本部 法規認証部」のチェック機能を強化し、惰行法による走行抵抗値の計測と申請を徹底していく。これまでは、四輪技術本部が法令違反の走行抵抗値の測定と申請を主導してきたためだ。
国土交通省は「一定の再発防止策は示されていると評価した。いつまでに取り組むのか、明確な目標を持ちながら取り組んでもらいたい」という。
鈴木修氏は「トップダウンで把握するのも、ボトムアップで自律するのもできていなかった」と反省の意を示し、鈴木俊宏氏は「風通しのよい組織に変えていく」と述べた。
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