OKIがディープラーニングによって海中音を学習させたAIモデルを用いて船舶の種類を自動で分類する「船舶分類AIシステム技術」を開発。船舶の出入りが多い港湾やカメラでは捉えにくい夜間などで海中音から常時自動で船舶分類を取得できるようになる。
OKIは2024年12月19日、ディープラーニングによって海中音を学習させたAI(人工知能)モデルを用いて船舶の種類を自動で分類する「船舶分類AIシステム技術」を開発したと発表した。同技術により、船舶の出入りが多い港湾やカメラでは捉えにくい夜間などで海中音から常時自動で船舶分類を取得できるようになる。社内で実施した検証実験において、船舶音データから抽出された少量のデータで学習した場合でも90%以上の高精度で分類できたという。今後は共創パートナーを募り、商品化に向けたフィールドデータの取得を行い、実践的な検証を進めていく方針だ。
海中では、電波は減衰が大きく、光波は散乱が大きいことから、数km〜数千km先まで伝搬可能な音波を活用した分類方法が用いられている。また海中では、音を発する生物/船舶によらず、海中の音源は種類に固有の特徴があり、音を使ってその種類を特定することができる。そこで多く用いられているのが、水中マイクで受波した海中音を人が聞くとともに、その音の特徴である周波数を可視化したものを目視して判断/分類するという手法である。しかし、人の熟練度により判断/分類に差異が生じることが課題だった。
今回開発した船舶分類AIシステム技術は、海中に設置した水中マイクで記録した音からディープラーニングに基づくAIモデルを作成し、周波数特徴から自動的に船舶を分類できる技術である。これにより、海中音を確認する人の熟練度に依存せず船舶を分類することができるようになる。従来よりも人の労力を減らせることもできるため、近年需要が高まっている省人化にも対応することが可能だ。
ただし、ディープラーニングモデルを用いて音の種類を正確に識別するには、通常大量の学習データが必要になる。公開されている海中音のデータは限定的であり、特にさまざまな船舶音情報を事前に用意するには時間やコストがかかることが課題だった。そこでOKIは、実際の船舶音データに対してデータのバリエーションを人為的に作成する「データ拡張」と、一部のデータのみの船舶音情報で学習させる「半教師あり学習」を適用し、少量の学習データであっても海中音の分類ができる工夫を施した。その上で、OKIが保有する約4時間の船舶音データを用いて学習したディープラーニングモデルを使用したところ、90%以上の高精度で海中音の分類ができたという。
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