MONOist プローブ情報の活用法としては、他にどのようなものがあるのか。
鎌田氏 まず挙げられるのが、東日本大震災における通行実績マップへの協力だろう(関連記事:「平常時の取り組みが災害時に役立つ」、通行実績情報マップの成果と課題が示唆)。リアルタイムプローブが収集された道路を通行実績があった道路と見なすことにより、被災地への物流などに役立ったと聞いている。
この技術を応用することで、新たに敷設された道路に関する調査も行える。走行履歴データと地図データを比較して、道路以外の場所を走行した記録を分析すれば、新しい道路を検出できる。この技術は、既にサイバーナビの地図データ更新に利用している。
MONOist 蓄積型プローブは、リアルタイムプローブと比べて圧倒的に情報量が多い。これをビッグデータと見なせばさまざまな応用ができそうだが、取り組みの事例はあるか。
鎌田氏 蓄積型プローブを使うと、走行履歴データだけではできない、さまざまな交通分析が可能になる。例えば、2009年春に高速道路料金が一律1000円に引き下げられた際には、前年比で高速道路の月間走行距離が70km近く増えるなど、料金引き下げ効果を確認できた。
蓄積型プローブからは、その車両の停車時間も分かる。この停車時間を使えば、観光地や商業施設などの滞在時間も分析できる。例えば、ディズニーランドにおける停車時間(=滞在時間)は12時間が一番多いが、隣接する葛西臨海公園の場合は1〜2時間がほとんどであることが分かった。
商圏分析も可能だ。蓄積型プローブにはユーザーの自宅の地点情報も含まれている。そこで、ある商業施設を指定して分析を行えば、その商業施設に停車した(=利用した)ユーザーの自宅がどのように分布しているかが分かる。訪問時間や時刻別訪問者数の分布なども分析できる。
MONOist トヨタ自動車はプローブ情報を有償で外部に提供する方針を発表している(関連記事:トヨタ自動車がビッグデータ市場に参入、プローブ情報を自治体や企業に提供)。パイオニアもプローブ情報の外部提供を検討しているのか。
鎌田氏 プローブ情報を活用するための研究活動は、2008年ごろから進めてきた。ここまで紹介した事例はこの研究活動に基づく成果であり、ユーザーの個人情報が特定できないような秘匿化の技術も開発済みだ。プローブ情報を用いた分析データサービスとして、社外に販売することは技術的には不可能ではない。
しかし、リアルタイムプローブのようにユーザーに通信費を負担していただいて得たものをパイオニアのカーナビサービス以外で利用することについては慎重さが求められるだろう。
最近になって、ビッグデータの利活用に関する理解は進みつつある。当社としては、プローブ情報を使って自社製品の機能を拡充することに注力する一方で、まずは通行実績マップのような社会貢献につながる分野からプローブ情報の活用を始めたいと考えている。
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