そういった悲しい思いをされる方を1人でも減らせるように、製造業で働く技術者、特にベテラン技術者の方には、いざというときの心構えとして、最低でも次の4点を覚えておいてください。
履歴書にブランク(企業に所属していない期間)があるだけで、採用企業の評価は下がります。また、転職先が決まるまで、どれだけの期間が必要なのかも分かりません。会社のことを考えるよりも先に、ご自身とご家族の生活のことを考えて、次の転職先が決まってから退職するようにしてください。少なくとも、希望・早期退職に申し込まれたら、すぐに転職活動を開始してください。
転職活動をするのなら、ご家族に伏せたい情報も出てきます。必ずご自身だけが使う専用のメールアドレスを取得しておいてください。
履歴書・職務経歴書の書き方も、Webで少し調べてみればコツが書いてあります。詳しいところはキャリアコンサルタントに相談した方がいいですが、将来に備えて転職活動をする前から定期的にご自身の業務を棚卸しして、職務経歴書をアップデートすることをお勧めします。
ベテラン技術者が転職する場合、求人情報サイトに掲載されている求人にやみくもに応募しても、ほとんど無駄になってしまいます。初めて転職する方なら、なおさらです。履歴書・職務経歴書の書き方、面接の受け答えの仕方など、一から知っておいていただく必要がありますから、1度は専門のキャリアコンサルタントに相談してみてください。
ただ、必ず“専門”のキャリアコンサルタントに相談してください。人材紹介会社のキャリアコンサルタントの中には、キャリアコンサルタントとしての経験が浅い方や金融やサービスなどご自身の出身業界はよく分かっていても、製造業で働く技術者の仕事がどんなものか、そしてどんな仕事にはどういったスキル・経験が求められるかをあまり知らない人が残念ながら少なくありません。そういったキャリアコンサルタントに頼っていても、転職先はほとんど決まりません。
“専門”ではないキャリアコンサルタントと巡り合わないように、事前に知人から評判を聞いてから相談をする相手を選ぶか、初めて相談に行ったときに「製造業のことについてどれくらい知っているのか」と質問してみた方がいいでしょう。
リーマン・ショック後、業績が悪化した企業では昇給がここ数年ストップしていたり、賞与が大幅に削られていたりする企業も少なくありません。転職で年収アップを果たせるのは、既に過去の話です。今在籍する会社を退職せざるを得なくなりましたら、年収がどのくらいまで下がっても生活していけるかを家族と相談しておいた方がいいでしょう。いったん下がったとしても、ご自身の努力次第で上げることもできるのですから、あまり悲観的にならず、まずは何事も挑戦する前向きな気持ちを持ち続けてください。
もはや、「新卒で入った会社で一生勤め上げる」時代ではなくなりました。安易に転職のことばかり考えて本業に身が入らないのもどうかと思いますが、キャリアについて無関心であり続けることはリスク以外の何物でもありません。
担当していた製品開発のプロジェクトが完了したときなど、ちょっとした暇ができることがあれば、キャリアや転職のことについて、ある程度は情報を収集するように心掛けてみてください。
中川 富士子(なかがわ ふじこ)
株式会社ブリンガ 代表取締役。沖電気工業、日本生命、ITベンチャー企業などを経て、商品企画、販売促進、法人営業、コンサルティングの実績を積み重ねる。キャリアプランもなく、将来性が不安定な派遣社員として働く若い技術者たちの現状を見て、キャリアアップとキャリアカウンセリングの重要性を確信。技術者としてキャリアアップを追及できる会社を作ろうと決意。2005年、ブリンガ設立。
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