2013年になっても続いている企業のリストラ。再就職を余儀なくされた製造業エンジニアに最低限知っておいてほしい“いろは”の“い”を製造業出身のキャリアコンサルタントが語る。
本記事は人材紹介会社「ブリンガ」中川富士子代表取締役からの寄稿です。
アベノミクスによる景気回復への期待が高まってきていますが、製造業の雇用をめぐる情勢はまだまだ芳しくありません。東京商工リサーチが2013年4月8日に発表したところによると、2013年に入ってから希望・早期退職者の募集実施を発表した上場企業は4月5日時点で34社。2012年は1年間で63社でしたから、前年を上回る勢いです。
希望・早期退職の募集状況を伝えるニュースを読むたびに、「当初の募集人数を○○人上回った」という一節に目が留まります。そういったニュースを読んで「それだけ多くの社員が会社を見限ったのか」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。確かに会社の将来が不安で応募する方も中にはいらっしゃるのかもしれませんが、実態はそうではないように思います。
私は今、キャリアコンサルタントとしてIT/製造業エンジニアの転職をお手伝いする立場ですが、もともとは製造業出身。今も製造業で働く昔の仲間から「この人の転職を支援してくれないか」と頼まれ、希望・早期退職されたベテラン技術者の転職活動を何十人とお手伝いしてきました。
そうした方々が語る退職理由は、「退職金の割増支給が大きく、今回限りで次は無いと言われた」というものもあれば、「何十年とお世話になってきた会社の窮地。今までのご恩を返すためにわが身を犠牲にしようと思った」というものもあります。「退職金を割増してくれるし、再就職支援会社も紹介してくれるからどうにかなるだろう」と楽観的に考えて退職された方もいれば、会社への恩返しのために退職されたベテラン技術者の方もいらっしゃるのです。
希望・早期退職に申し込まれたベテラン技術者と面談させていただくと、「本当にこれまで転職することなんて考えてもいなかったんだな」と痛感させられます。
というのも、ほとんどの方が転職活動を始められるのは、会社を退職になってから。ご連絡先のメールアドレスはご家族で共用のもので、職務経歴書なんて書いたことが無い方も少なくありません。
30歳後半あたりから、40歳を超えるとさらに技術者の転職は難しくなってきます。若いうちなら基礎能力やポテンシャルで評価してもらえるところがあるのですが、年齢を重ねるにつれて、それまでの業務経験・実績を中心に評価されるようになります。しかも「技術者として優秀かどうか」という人物本位の評価よりも先に、「この人の経験は会社が求めている経験とどれだけ一致するか」という視点で評価されるのです。数十〜数百件の求人情報があったとしても、ベテラン技術者が応募して採用される可能性のある求人情報はわずか数件。ピッタリと当てはまるパズルのピースを探すかのように、非常に困難な転職活動になります。
ですから、転職先が決まるまで数カ月〜半年、場合によっては1年掛かることも普通にあります。退職金の割増支給も再就職までのブランクが長くなれば、その間の生活費で消えてしまう可能性も高くなります。ベテラン技術者を取り巻く転職事情を知らず、「そのうち決まるだろう」と高をくくり、次第に疲弊され、いつしか自分のこれまでの人生が否定されたかのように感じるようになり、ひどく悩まれる方をたくさん見てきました。
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