千葉工業大学は、サーモグラフィやガンマカメラによる計測データを、現場の3次元データ上に表示できる「汚染状況災害対策用作業マッピング技術」を開発した。コンピュータ上で視点を自由に切り替えることが可能なので、汚染状況の把握が容易に行える。
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千葉工業大学は、「災害対応ロボット操縦訓練シミュレータ」も開発した。実機による訓練とは異なり、大掛かりな設備や準備が不要なので、より多人数・長時間の訓練にも対応できる。
さらに、東芝が開発したのは、水中での移動も可能な「水陸両用移動装置」だ。福島第一では、原子炉建屋の地下に汚染水がたまっており、通常のロボットでは内部の調査が行えない。対して、このロボットは水陸両用なので、地上を自走して現場まで行き、そのまま水中に潜ることが可能。漏水箇所の調査などに活用できると期待されている。
CYBERDYNEは、福祉・介護用に開発されたロボットスーツ「HAL」を、災害対策向けに応用した「災害対策用ロボットスーツHAL」を開発(関連記事7)。放射線防護のために重量のあるタングステン製の装備を身に付けても、HALがその重量を支えてくれるため、作業員の負担を軽減できる。また、冷却システムも内蔵しており、劣悪な高温環境でも熱中症を防げるようになっている。
いわゆる“縦割り行政”の問題であるが、NEDOは、災害対策ロボットの開発はできても、「原発用」としてロボットを開発することはできない。そのため、このプロジェクトが対象とするのは、あくまでも自然災害やCBRNE災害(化学、生物、放射性物質、核、爆発物)といった、“災害全般”である。とはいえ、災害対策ロボットは原発事故にも活用できるわけで、強く念頭にあるのはもちろん福島第一だ。NEDOには過去数十年、ロボットの開発に関わってきたノウハウがあり、原発事故のために、「組織として、できる範囲で貢献したい」という姿勢は高く評価できるだろう。
ただ1つ残念なのは、今回のプロジェクトが単年度のものであり、ここで開発した技術が今後どのように活用されていくのか、不透明な点だ。
懸念されるのは、東海村JCO臨界事故を受けて開発された原発ロボットの“二の舞”になってしまうこと。このときも1年だけの国家プロジェクトであったが、研究開発が続かず、福島第一の事故が起きた時に、技術が生かせなかった。あるロボットなどは、維持費もなかったために破棄され、展示物として放置されていたと聞く。
福島第一の廃炉には今後、数十年という長い年月がかかる。必要となる技術は日々変わっており、現場と密接に連携して、ロボット開発も継続していくことが何より重要だ。
2013年度に後継となるプロジェクトを立ち上げる計画は「今のところない」とのことだが、NEDOもその重要性は認識しており、久木田正次技術開発推進部長は会見で「求められているのは、開発にとどめておくことではなく、一刻も早く現場に投入して、活躍すること。ここで研究が終わりではなく、今後もしっかりとフォローしていきたい」と述べた。
NEDOの古川一夫理事長は、南海トラフ巨大地震や交通インフラの老朽化による事故を念頭に、「災害対策ロボットの活躍の場は増えつつある。先手先手を打って災害に備えることが重要だ」と指摘。「NEDOといえば『エネルギー・環境』と見られがちだが、『ロボットといえばNEDO、NEDOといえばロボット』といわれるように頑張っていきたい」と意気込みを語った。
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