タイのEMS企業、生産計画はどうなっているタイから見た製造業の今(1)(2/2 ページ)

» 2013年02月13日 10時00分 公開
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サプライヤに弱点が残るタイ

 ただし、これでも対応できない場合がある。サプライヤに課題があるからだ。国家戦略に基づき、部材から製品まで広く裾野をもつタイの製造環境では、Team Precisionも多くの材料をタイ国内のサプライヤから調達している。しかし、比較的インフラが整ったタイの工場区においても、サプライヤからの部材提供に遅れの生じることが多い。

 従って生産スケジュールを立てる場合、部材による制約スケジュールの他、生産計画の変更を反映した部材発注などができるようにしておかなければいけない*1)

 多くの海外工場と同様に、Team Precisionにも情報システムの専任者はいない。このため、生産管理業務にかかわるメンバーが、生産スケジューラを運用しなければならない。

日系企業よりも即応力に優れる

 ここまでTeam Precisionが置かれた困難な立場を主に紹介してきた。だが、Team Precisionには日系製造業の海外工場と比べて優れている所も多い。例えば、SCMチームによる生産計画策定とその変更に対するトップダウンの対応の速さだ。

 次の課題も見えてきた。タイ政府は国内の労働条件の改善にも取り組んでいる。例えば、2012年からタイ全土で最低賃金を引き上げる政策が実施された。賃金コストの優位性を掲げて欧米企業向けの仕事を受けてきたTeam Precisionにとっては、これまでの「Quality」「Delivery」に加えて「Cost」を意識した生産計画が、今後不可欠となってくると考えられる*1)

*1) なお、当社(アスプローバ)はTeam Precision向けに、必要最低限の生産スケジューラ機能を備えたソフトウェア「Asprova Light」を提供している。同ソフトには、生産能力による山崩しや、製造実績を反映したリスケジューリング機能が備わっており、本文中で触れた課題を解決できる。生産計画の変更を反映した部材発注ができるよう、Asprova Lightのオプション製品も用いた。コストを意識した生産計画に向けては、タイのパートナー企業であるData Collection Systemsと連携し、「Asprova KPI即時原価シミュレーション機能」を提案している。


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著者略歴

アスプローバ株式会社
副社長 藤井賢一郎(ふじい けんいちろう)

半導体工場のSEとして生産管理システムを開発。営業に転じてからは、製造業のお客様に向けたシステム提案一筋に従事。生産管理パッケージソフトウェアを100社以上に導入した他、生産計画ソフトウェアの採用が300社以上に達した実績がある。2012年まで、アスプローバチャイナ社の総経理として活躍、2013年からは、チャイナ・プラスワンビジネスとしてタイに赴任予定。


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