ホンダは、2013年以降に発売する新型車に、開発中の3種類のハイブリッドシステムを採用して攻勢をかける。これらのハイブリッドシステムの二次電池として用いられるリチウムイオン電池の量産規模も、従来比で3倍となる年間1500万セルに拡大する方針だ。
ホンダのハイブリッドシステムといえば、小型・軽量でモーターを1個使用する「IMA」が知られている。IMAを搭載した「シビック ハイブリッド」や「インサイト」、「フィット ハイブリッド」などの市場投入によって、2012年9月末にはハイブリッド車(HEV)の世界累計販売台数で100万台を突破している。
今後もエコカーとしてHEVの需要は高まるとみられている。ホンダは、HEV市場で先行するトヨタ自動車などの競合メーカーに対抗するため、2013年以降に発売する新型車に、開発中の3種類のハイブリッドシステムを採用する方針を表明している。
これらのハイブリッドシステムは、使用するモーターの個数によって種類が分けられている。IMAと同様にモーターを1個用いる「i-DCD(Intelligent Dual Clutch Drive)」は、IMAと比べて燃費を30%以上、加速性能を15%以上向上できる。2013年秋ごろに発売される新型「フィット」やフィットベースの小型SUV(スポーツ多目的車)は、i-DCDの搭載によって、大幅な燃費向上が見込まれている。
モーターを2個用いる「i-MMD(Intelligent Multi-Mode Drive)」は、2013年初頭に北米で発売されるプラグインハイブリッド車(PHEV)「アコードPHEV」に搭載されている。アコードPHEVは、PHEVではあるものの、HEVとして走行する際の良好な燃費も特徴となっている(関連記事)。
モーターを3個用いるのが、高級車やスポーツカー向けの「Sport Hybrid SH-AWD」である。後輪側に組み込んだ2個のモーターによってリアトルクを自在に引き出し、高い走行性能を実現できる。2013年春に北米市場で発売する高級車ブランド「Acura」のHEV「Acura RLX ハイブリッドタイプ」や開発中のスポーツカー「NSX」、2014年度に国内市場で発売する高級車「レジェンド」の後継モデルに搭載する。
3種類のハイブリッドシステムの共通点は、二次電池としてリチウムイオン電池を採用していることだ。ホンダは、2011年4月に北米市場で発売したシビック ハイブリッドからリチウムイオン電池を採用している。スポーツHEV「CR-Z」を2012年9月にマイナーチェンジした際にも、パナソニック(旧三洋電機)製のニッケル水素電池から、リチウムイオン電池に置き換えている。
これらのリチウムイオン電池は全て、ジーエス・ユアサ コーポレーション(GSユアサ)とホンダの合弁企業であるブルーエナジーが生産している。これまで、ブルーエナジーの量産規模は年間500万セルで、シビック ハイブリッド12万5000台分に相当していた。
しかし2013年以降は、ホンダがリチウムイオン電池を搭載する新型HEVを続々と投入することから、ブルーエナジーの量産規模を拡大する必要に迫られていた。そこで、ブルーエナジーの長野田工場(京都府福知山市)を拡張し、従来比で3倍となる年間1500万セル(シビック ハイブリッド37万5000台分)まで量産規模を引き上げる計画である。
ブルーエナジーは、規模拡張のための資金の一部として、経済産業省から低炭素型雇用創出産業立地推進事業補助金を2012年12月に受領している。補助金の総額は31億8700万円である。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.