ホンダの「フィット ハイブリッド」、低速走行時のEV走行比率を向上

» 2010年10月14日 00時00分 公開
[Automotive Electronics]

 本田技研工業(以下、ホンダ)は2010年10月、東京都内の本社で会見を開き、小型車「フィット」のマイナーチェンジモデル(以下、新型フィット)と、ハイブリッドモデル「フィット ハイブリッド(以下、フィットHEV)」を発売した。新型フィットの価格は123万円から、フィットHEVは159万円から。国内市場における月間販売台数は、新型フィットとフィットHEVを合わせて1万4000台を計画している。


写真1 ホンダの「フィットハイブリッド」と同社社長の伊東孝紳氏 写真1 ホンダの「フィットハイブリッド」と同社社長の伊東孝紳氏 

 会見の冒頭で、同社社長の伊東孝紳氏(写真1)は、「当社は2010年7月に、『良いものを早く、安く、低炭素でお客様にお届けする』という、2020年に向けての企業ビジョンを発表した。このビジョンの実現に向けた第1弾製品となるのがフィットHEVだ。このフィットHEVを、世界に先駆けて国内市場に投入することにより、国内におけるハイブリッド車の普及に弾みをつけたいと考えている」と語った。なお、新型フィットとフィットHEVの発売前1カ月間の事前受注台数は1万4000台に達した。このうち、1万台をフィットHEVが占めた。「当初の事業計画では、月間販売台数のうち、60%が新型フィット、40%がフィットHEVになると考えていた」(ホンダ)という。

 新型フィットは、排気量1.3l(リットル)のエンジン「i-VTEC」を搭載する「13G」/「13Gスマート セレクション」/「13L」と、排気量1.5lのi-VTECを搭載する「15X」/「RS」がある。基本サイズは、全長3.9m×全幅1.695m×全高1.525m。ただし、各車の4輪駆動車(4WD)モデルは全高が1.550m、RSは全長が3.915mとなっている。重量は、最軽量の13Gの990kgから、15Xの4WDモデルの1170kgまで、200kg近い幅がある。新型フィットは、外形デザインを変更することにより、従来モデルと比べて空気抵抗を低減した。これにより、10・15モード燃費は、従来モデルの24.0km/lから、24.5km/lに向上している。

写真2 フィットHEVのIPU 写真2 フィットHEVのIPU 写真の右下、IPUから突き出ているのが冷却ダクトである。

 一方、フィットHEVは、新型フィットのプラットフォームと外形デザインを用いたもので、フィットのハイブリッドモデルという位置付けになっている。パワートレインは、排気量1.3lのi-VTECエンジンとホンダ独自のハイブリッドシステム「IMA(Integrated Motor Assist)」、無段変速機(CVT)を組み合わせたものである。サイズは、新型フィットの基本サイズと同じ、重量は1130kgとなっている。10・15モード燃費は、同社が2009年2月に発表したハイブリッド車専用モデルである「インサイト」と同じ30.0km/lを達成した。荷室の容積は341l。荷室の下部にIMAを設置しているため、新型フィットの384lよりも少し小さくなっているものの、「ほぼ変わらない広さ、使い勝手を実現できた」(ホンダ)という。

 フィットHEVのIMAシステムは、出力10kWのモーター、三洋電機製のニッケル水素電池モジュールやインバータを統合したIPU(インテリジェントパワーユニット)など、基本的にインサイトと同じ部品を用いて構成されている。モーターが、車両前方に搭載されるエンジンと一体化していること、IPUが荷室の下部に設置されていることも同じである。ただし、IPUについては、荷室の容積を新型フィットと同様に300l以上とすることを目的として、IPU内における部品配置や、インバータやニッケル水素電池モジュールを空冷する冷却ダクトのレイアウトなどを変更している(写真2)。特に、冷却ダクトについては、インサイトではIPUの前方から後部座席の横側に配していた吸気ダクトを、フィットHEVではIPUの後方から荷室の上方に配するように変更した。また、冷却ダクトに断熱材や吸音材を追加することで、冷却効率の最適化と冷却ファンによる騒音の低減を図っている。そして、30.0km/lという燃費を達成するために、タイヤの回転抵抗やブレーキキャリパーの抵抗を低減し、IMAに対応するよう新たに開発したサスペンションを導入したりしている。

写真3 EV走行時の表示 写真3 EV走行時の表示 フィットHEVと「インサイト」では、ステアリングの中央に設置したMID(マルチインフォメーションディスプレイ)を用いて、モーターとエンジンの利用状態を表示する。フィットHEVは、EV走行を行っているときには、MIDの上部にあるクルマの画像の中に「EV」という文字が表示される(右)。インサイトは、EV走行時にこのような表示は行わない(左)。

 フィットHEVでは、ハイブリッドシステムの制御について、インサイトと比べて、より市街地走行に適した設定が施されている。具体的には、発進時におけるモーターアシストの割合を最適化するとともに、低速走行時にモーターだけで走行する「EV走行」に入りやすくするなどした。ホンダは、「フィットHEVはインサイトよりも70kgほど軽い。このこともあって、フィットHEVは、40km/h以下の低速走行時にEV走行をより行いやすくなった。フィットHEVとインサイトは、いずれも低燃費運転を支援するのに用いるMID(マルチインフォメーションディスプレイ)を装備しているが、インサイトでは、EV走行をしているときにMIDには特別な表示は行わない。それに対し、フィットHEVでは、EV走行時にはEV走行していることをMIDに表示するようにした」としている(写真3)。

 また、フィットHEVでは、通信費無料でホンダのテレマティクスサービス「インターナビ プレミアムクラブ」を利用できる「リンクアップフリー」に対応したカーナビゲーションシステム(以下、カーナビ)をオプションで用意した。さらに、このフィットHEVのカーナビでは、リンクアップフリーと経路案内サービス「インターナビ・ルート」を同時に利用できる。同社の純正カーナビにおいて、これら2つのサービスを同時に利用できるものは初めてである。

 新型フィットのベースモデルである13GとフィットHEVの間には36万円の価格差がある。この36万円のうち最も大きな割合を占めるのが、「コストが20万円」(ホンダ)というIMAである。また、フィットHEVのベースモデルは、13Gのメーカーオプションである「Fパッケージ」に相当するオプションを標準装備している。Fパッケージの価格は6万である。残りの10万円は、MIDや、新たに採用したサスペンションなどのコストだと見られる。

(朴 尚洙)

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