ホンダのハイブリッドスポーツカー「CR-Z」がマイナーチェンジした。リチウムイオン電池を採用してモーターを高出力化するなど、2010年2月発売の初代CR-Zよりもさらに走行性能を高めた。瞬時に加速できる「PLUS SPORTシステム」も新たに搭載している。
ホンダは2012年9月27日、スポーツカータイプのハイブリッド車(HEV)「CR-Z」をマイナーチェンジしたと発表した。リチウムイオン電池の採用でモーターの出力を1.5倍に高めるとともに、エンジン回転が高速のときに出力とトルクを向上できる高回転型エンジンも搭載。これらのモーターとエンジンを使って瞬時に加速できる「PLUS SPORTシステム」も追加するなど、2010年2月に発表した初代CR-Zよりも走行性能をさらに高めた。税込み価格は236万5000円から。日本市場での月間販売目標台数は450台。
同社は2011年4月に北米市場で発売したHEV「シビック ハイブリッド」で、初めてHEVにリチウムイオン電池を採用している。日本市場向けのHEVでは、新型CR-Zが初となる。初代CR-Zでは、「フィット ハイブリッド」などに搭載されているニッケル水素電池を使用していた(関連記事)。
リチウムイオン電池セルはGSユアサとホンダが出資するブルーエナジー製。電池パックはこの電池セルを40個直列で接続しており、出力電圧は144Vである。シビック ハイブリッドの電池パックも、電池セルを40個直列で接続していた。初代CR-Zの電池パックは、パナソニック(旧三洋電機)製のニッケル水素電池セルを7個直列接続しており、出力電圧は100Vだった。電池パックの出力電圧が約1.5倍になったことで、モーターの最高出力も初代CR-Zの10kWから15kWに高まった。ただし、最大トルクは78Nmで変わっていない。
さらに、初代CR-Zと比べて電池パックの充放電速度も向上したため、ブレーキ回生システムで発電した電力を効率よく活用できるようになった。これらの他、今回採用した電池セルが、内部抵抗が少なく発熱しにくいこともあって、夏などの高温環境でも十分に性能を発揮できるといった特徴も得られている。
走行性能の主軸となるエンジンについても、排気量は初代CR-Zと同じ1.5l(リットル)ではあるものの高回転型の「i-VTEC」に置き換えた。高回転型i-VTECは、バルブを動かすカムとロッカーアームについて、低回転用と高回転用の2種類を備えており、エンジンの回転数に応じて動作を切り替えられる。初代CR-Zの1.5lエンジンと比べて、エンジン動作の全領域における出力とトルクの向上を実現した。特にエンジン回転数が5400回転/分以上の領域ではさらに出力とトルクが向上している。
初代CR-Zは、燃費重視の「ECONモード」、燃費と走行性能をバランスさせた「NORMALモード」、走行性能重視の「SPORTモード」という3つの走行モードを切り替えることができる。これらの3つのモードは、アクセルペダルの操作量に対してエンジンのスロットル開度を電子制御する「ドライブ・バイ・ワイヤ(DBW)」によって実現されている。
新型CR-Zでは、これら3つの走行モードの他に、DBWの活用によって瞬時の加速を可能にする「PLUS SPORTシステム」を追加した。同システムは、ステアリング内にある「PLUS SPORTボタン」を押して、アクセルを少し踏み増すことで、アクセルが低開度であってもDBWの制御によってスロットルバルブを全開にし、エンジン出力を最大化する。併せてモーター出力も最高レベルに引き上げて、瞬時の加速を実現するというものだ。
電池パックの電池セルを、ニッケル水素電池からリチウムイオン電池に置き換えた場合、容量の向上などによって軽量化が期待できる。しかし、新型CR-Zの車両重量は、初代CR-Zと同じである(CVTを搭載する「α」タイプで1160kg)。このため車両重量の軽量化による燃費向上は実現できていない。
ただし、エンジン内部の抵抗の軽減や、モーターによる発電頻度の低減、CVTの効率向上などによって燃費を向上している。CVTを搭載するαタイプのJC08モード燃費は、初代CR-Zの22.8km/lから23.0km/lに向上した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.