メンター・グラフィックスは、システム内部における1次元(1D)的な線形の熱伝達について解析するツール「Flowmaster」と、3次元(3D)CADツールで作成したモデルに対して熱流体解析を行えるツール「FloEFD」を連携させる「1D-3D熱流体解析ソリューション」を提案している。
Mentor Graphics(メンター・グラフィックス)は2012年7月17日、システム内部における1次元(1D)的な線形の熱伝達について解析するツール「Flowmaster」と、3次元(3D)CADツールで作成したモデルに対して熱流体解析を行えるツール「FloEFD」を連携して運用できるようになったと発表した。システム全体の解析を高速に行う1Dの熱流体解析に、3Dモデルを使った熱流体解析から得た個別部品に関する高精度の熱特性をそのまま組み入れられるので、より高い精度を持ったシステムの設計が可能になる。両ツールの連携は、API(Application Program Interface)などを用いておらず、ソースコードレベルで統合することにより実現した。主に、自動車、航空宇宙、石油やガス、電力などのエネルギー業界における大規模なシステム開発の用途に向ける。
今回機能連携が発表された、FlowmasterとFloEFDは、メンターのMechniacal Analysis(メカニカル・アナリシス)部門が扱う製品である。同部門は、FloEFDや電子機器向けの熱流体解析ツール「FloTHERM」などを開発/販売していたFlomeircsを、メンターが2008年6月に買収したのに合わせて発足した。さらにメンターは、2012年1月にFlowmaster Groupを買収しており、同社が展開していたFlowmasterはメカニカル・アナリシス部門の製品ラインアップに加わっていた。同部門のマーケット開発ディレクターを務めるJohn Isaac氏は、「われわれの部門は、売上高が2009年からの3年間で倍増するなど好調だ。この成長には、日本法人の活躍も大きく貢献している」と語る。
メンターが、FlowmasterとFloEFDの連携機能の主な用途として想定するのが、車載機器や航空電子機器の冷却システム、航空機の環境制御システム、プラントなどの複雑なパイプシステムなどである。従来は、Flowmasterを使ったシステムの内部を流れる冷却材などの流体や熱の伝導に関する1Dの熱流体解析は、解析は高速に行えるものの、一定の精度以上の解析結果は得られなかった。一方、CADツール上でのFloEFDを使った3Dの熱流体解析は高精度の解析結果が得られるものの、大規模なシステムに適用すると解析時間が膨大になるため、個別部品程度の規模のものにしか適用できなかった。
今回発表した両ツールの連携機能を使えば、Flowmasterで開発中のシステムに対する1D熱流体解析を行う際に、FloEFDによる高精度の熱流体解析で得た個別部品の熱パラメータをシームレスに組み込めるようになる。これにより、高速だが解析精度に難のある1D熱流体解析と高精度だが解析に時間のかかる3D熱流体解析、それぞれの短所を長所で補う「1D-3D熱流体解析ソリューション」を実現しているのだ。
この1D-3D熱流体解析ソリューションは、部品サプライヤにおける開発中の部品のシステム内部における挙動検証や、システムメーカーにおける設計精度の向上などで効果を発揮する。メンターによれば、同ソリューションの出荷時期は2012年後半となっている。
なお、Flowmasterの国内販売代理店は、2012年1月以降のメンターによる買収以前と同様に伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)が担当する。
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