「データマネジメントのソフト」というと、“何だか小難しい”印象を抱く方が、いまだに多いようですね。
実際、“製品データ管理の仕組み”というものは、会社ごとで異なるものです。また、“インストールすれば取りあえず動く”類のアプリケーションではなく、動かすにあたって、あれこれセットアップする必要があり、面倒と言えば、面倒です……。
それに、PDMがなかったとしても、取りあえず、業務の運用には大きな支障がなかったこともあるでしょう。
過去、私がベンダーに在籍していた頃、中小規模の組織にぴったりな、さまざまなPDMの普及を目指していたことがありました。当時、業界的にもPLMを大きくプロモーションする動きがあったと記憶しています。しかし結果から言えば、まさに「笛吹けど、踊らず」だったのです。
それから数年が経過し、さらに3次元CADが普及し、世の中の3次元データの量が急速に増えてきています。そういうこともあって、いま、――極めて地味に、ですが――データ管理に注目が集まり始めているのでは、と筆者は見ています。
そういうわけで、次に紹介するのは、クリエティブマシンの扱う製品データ管理システム「Design Data Manager(DDM)」(開発元:英Concurrent System:CSI)です。この製品は、「設計ドキュメント全体の管理システム」として、「どのような立場の人でも使えるように」配慮されています。
DDMは、「データのチェックイン/チェックアウト」「バージョン管理やリビジョン管理」「CADデータを含む多様なデータのヴォルティング」「排他制御やセキュリティ」といった基本的な機能は、当然備えています。
あらかじめ「AutoCAD」「Autodesk Inventor」「Solid Edge」「SolidWorks」「Creo Elements/Pro」そして「IRONCAD」との連携が準備され、これらのCADユーザーであれば、すぐに使い始めることが可能です。
もちろん、管理できるのはCADデータだけではありません。仕様書や報告書なども、CADファイルや構成とリンク付けることが可能です。リンクは付けずに単独でも管理できます。その他、「簡単に自社仕様にできるワークフロー管理」「登録時の自動発番機能」なども備えます。
ライセンスはフローティングであるため、設計者や管理者など、ユーザーの人数分のライセンスを購入する必要がありません。
さて、DDMの特徴として私が何を見たかというと、何だか変な言い方なのですが……、「決して派手さはないけれど、PDM本来の基本機能を大事にしている」「それらを使いやすく提供している」ということです。それがつまり、「導入のしやすさ」につながってくるのではないかと思うのです。
製品ライフサイクルを管理するために、そもそも製品データを管理する必要があります。つまり、“一人設計事務所”だとしても、実は、製品データ管理は重要ということになります。チームで設計していようが、個人で設計していようが、同じなのです。
データ管理の重要性は、私が語るまでもありません。
例えば、昔から製品データ管理をきちんとしてこなかったばかりに、例えば「過去データを流用したいけど、うまく検索できない……」なんて話がよくありますが、DDMではこのあたりの使い勝手をよく考えているようです。
部品構成のヒモ付けやバージョン管理はもちろんですが、データ検索しやすいクエリによって、いわゆる“データ管理慣れしていない人”でも、目的のデータを検索しやすくしている点が、DDMの特徴でもあるといえそうです。
オブジェクト、プロパティ、メタデータなどを対象にして、キーワード設定や検索フィルタなどを利用しながら、多彩で“グーグルっぽい”検索が可能です。さらに「よく使う検索条件」は保存して再利用できます。
そうそう、“ちょっとしたところ”ではあるのですが……、DDMでは、データ保存の方法にも特徴があります。よくあるPDMでは、データ管理システムにデータ登録したい場合は、システムにチェックインする必要があります。しかし、DDMの場合には、それが必要ありません。CADデータの保存や更新の際に、DDMの処理が実行されるからです。
その際、確認画面のダイアログで、DDMへ登録作業していることが分かります。ユーザーが特に意識しなくても活用できるのも、初心者ユーザーにとっても、熟練ユーザーにとっても魅力といえましょう。
チームで開発する際、「設計者以外の人がデータを確認する」といったこともDDMで容易に可能となっています。
管理者の場合には、「本格的にPCで何か作業をする」というよりは、「スマートフォンやタブレットで(会社の外などで)確認作業したい」ということも、昨今のトレンドです。DDMでも、それが可能です。
筆者もそのデモを見ましたが、WebブラウザベースのUIを採用しているため、端末の種類を選ぶことなく操作可能で、パフォーマンスも十分なものでした。
ちなみに開発元であるCSIの顧客は、15人以下の組織が中心ということです。つまり、実績としても、「これからデータマネジメントを導入していこう」と考える大多数の企業にとって、“自分たちに近い環境での導入”が進んでいる例として参考になるといえそうですね。
ところで、「3次元データ活用」という視点でもう1つ。データ管理から再び、3次元データのアプリケーションの方に話を戻します。
現在、「3次元データ活用をすることで生まれる価値」というところに視点が移り始めています。そこで、さまざまなソリューションが登場しているわけですが、その1つがビュワー――それも“高機能な”ビュワーであるといえます。今回出展されていた「IRONCAD COMPOSE」もそのようなソフトだといえます。
製品名に「Compose(構成する)」とある通り、モデリング操作も可能です。実際に、IRONCAD自体が採用しているUIを活用することで、インポートした3次元形状を使用して、アセンブリの組み合わせに変更を加えたりなどができます。
レビューする際にも簡単にインタラクティブに変更しながら、ディスカッションを進めていくという活用も可能でしょう。
もちろん、製品の確認や検査するための測定ツールや、ビジュアルイメージを作成するためのレンダリングツールなども搭載されています。
3次元をもっと活用して、さまざまな関係者を巻き込んでいくためのツールとして、ポテンシャルを感じるものでした。
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さて今回は、いろいろなブースをカバーするつもりでしたが……、またもや文字数が足りなくなってしまいました。ということで、「DMS2012を歩く」は、後もう1回続きます。次回は、生産ライン周りの話題やCAMなどになる予定です。
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