連載「設備設計現場のあるあるトラブルとその解決策」では、設備設計の現場でよくあるトラブル事例などを取り上げ、その解決アプローチを解説する。連載第14回は、ソフトウェア設計者が現場で混乱してしまう、機械設計者からの要望【安全対策編】をお届けする。
本連載は、前回シリーズ「いまさら聞けない 製品設計と設備設計の違い」をイントロダクションと位置付け、設備設計の現場でよくあるトラブル事例などを紹介し、その解決アプローチを解説していきます。
生産設備のプロジェクトでは、機械設計者、または機械系出身の人(以下、機械屋さん)がプロジェクトマネジャーになるケースが非常に多く見られます。機械屋さんが仕様を決めて機械設計を行い、その後に電気設計、ソフトウェア(以下、ソフト)設計へと工程が進みます。
建前上、機械屋さんがプロジェクトマネジャーの位置付けとなるため、機械/電気/制御の各要素を総合的に考慮しながら、要求仕様を満たせるよう仕様を取りまとめます。しかし実際には、電気/制御への理解が十分に及んでいないケースもあり、ソフト設計者からクレームが入ったり、機械屋さんとソフト設計者の間で仲たがいが生じたりすることも少なくありません。
機械設計者でもあり電気/ソフト設計者でもある筆者としても、機械屋さんが電気/制御に詳しくないこと自体は仕方ないにしても、「もっと早い段階でソフト屋さんに仕様を相談してほしかった……」と感じる場面は多くあります。
特に装置仕様の中でも「作業者の安全に関わる事項」は重要度が非常に高く、機械/電気/制御それぞれの立場から設計を検討し、十分な連携を取ることが理想です。ただ実際のプロジェクトでは、ソフト設計者に相談が来るころには、
といった状況になっていることがほとんどです。
その結果、作業者の安全を十分に確保できない装置になっていたり、出荷や引き渡し段階になっても現場責任者の承認が得られなかったりする事態にもつながりかねません。だからこそ、プロジェクトを仕切っている機械屋さんには、せめてソフトの観点からの安全対策に関する知見を身に付けてほしいところです。
そこで今回は、安全対策をテーマに、ソフト設計者が混乱する機械屋さんからのよくある要望事例と、その考え方について解説します。
ラダー回路の設計やタッチパネルの設計など、ソフト設計には安全対策の実装が含まれることが一般的です。例えば「ソフト上で機構の位置パラメーターを設定し、それより先の位置へ機構が動作できないようにする」といった制御があります。
一見、機械屋さんからすると「ソフト上でしっかり対策されているのであれば、それで十分ではないか」と思われるかもしれません。しかし、このようにソフトだけで安全対策がなされている装置は、基本的にNGです。
機械の安全対策について考える際、基本原則として参照されるのが「JIS B 9700(機械類の安全性―設計のための一般原則―リスクアセスメント及びリスク低減)」です。この規格では、安全対策を次の優先順位で実施することが求められています。
例えば、モーター駆動の直動機構でオーバーラン対策を行う場合、ラダー回路上での対策はステップ2の方策となります。そのため、まずはステップ1に該当するリスクそのものを取り除く設計から検討する必要があります。ハード的なストッパーの設置などで対策できるのであれば、そちらを優先すべきです。
仮にステップ1の方策が難しく、ステップ2の方策を採用する場合でも、「オーバーランを検知したときにモーターへの動力を遮断する」といったハード面での安全対策を講じるべきです。なぜなら、同じリスク低減の方策であっても、ソフトによる対策はハードによる対策と比べてミスや不具合の影響を受けやすいからです。
具体例としては、
など、多くの要因が考えられます。
また、本来あるべき「インターロック」(次ページで解説)も、わずかな手順を踏むことで無理やり回避できてしまう場合があります。このように安全対策が容易にすり抜けられる可能性があるため、基本はハード面で対策するべきです。
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