2012年6月に開催した第23回 設計・製造ソリューション展に見た業界動向を考察するシリーズ。今回は、CAEとCADについて取り上げる。
前回は、今年のDMS(第23回 設計・製造ソリューション展:2012年6月20〜22日開催)で特ににぎわっていた3次元プリンタ関連を中心にレポートしました。実は2011年のDMSレポートで「CADやCAEのゾーンは少しおとなしめ」という旨を書きましたが、その印象は2012年も引き続き……という状況でした。前回も書いたように、製造業では主要な製品を中心にCADの普及が進み、その機能についても成熟してきました。そのようなこともあり、CAD/PLMやCAEのベンダーについては、「毎年必ず出展する」というようなことはなくなりました。主要といわれる大手ベンダーであっても、出展したり、しなかったり……。2005年ごろのように、ソリッドワークス(SolidWorks)とオートデスク(Autodesk)が、中央通路を挟んで向かい合い、巨大ブースを構える! ……という状態も見られなくなりました。
最近のDMSにおけるCAD/PLMベンダーの展示については、例えば「主力製品にフォーカスする」といった、“実質を示す形”の傾向が強まってきているようです。
とはいえ、3次元(3D)の価値は高まる一方ですし、「CADデータを作成し活用すること」の重要性は全く変わっていません。
ということで「DMS2012を歩く」第2〜3回では、CAEやCADを中心に紹介していきます。「できるだけ多くのベンダーやソフトを紹介したい」と考えたので、若干駆け足気味なところもありますが……、ご容赦くだされば幸いです。
今回は、まずCAEについて話をしていきましょう。
CAD、CAEゾーンで今回最初に訪問したのが、エムエスシーソフトウェア(以下、MSC)です。MSCは、昨年もDMSに出展していませんでしたし、私自身、久しぶりにお目に掛かる状況で、ブース訪問を楽しみにしていました。同社の「Marc」など、私も過去に関わったことがあるソフトの最近の状況も気になっていました。
ここでは、比較的新しめなMSC製品を中心に紹介します。
最初に紹介するのは、粒子法ソルバを採用する流体解析ソフト「XFlow」です。XFlowは「メッシュレスソルバ」(ユーザーによる解析前のメッシュ分割プロセスが不要)で、単相流や2相流の解析、連成解析もできます。伝熱解析や、物体の移動を考慮した解析が得意です。
解析のためのメッシュの解像度が自動でアップデートされる(つまり、メッシュを自動で必要に応じて細かくできる)「Adaptive Wake Refinement」という機能もあり、流れの発達に伴って、後流(動作する物体の後方に回り込む流れ)との境界面を動的に移動・適合することが可能です。この機能があることで、例えば「Adams」(後述)などで機構解析しながら、それと連成して計算可能ということです。
ちなみに、最近のCAE(解析ソフト)ベンダーに見られる傾向の1つとして、「異なる領域の解析を連成させるソリューションを積極的に展開している」ということがあります。
今回、MSCがブースで紹介していたXFlowの活用例の1つに、クリーンルーム内の流れ解析がありました。
既に導入が進んでいる海外大手家電メーカーの例で、ロボットの移動などで生じる、大きな流れ場の変化に対応した解析を進めている例のようです。
XFlowは、ポンプ性能の測定などにも活用可能です。流体による活力とバルブのバネ定数の釣り合いを動的に解くことで、その性能予測に寄与します。
ところで、そのように「大規模で高精度な解析」が可能になることは大変に結構ですが、「解析におけるパフォーマンスや、データサイズはどうなのだろうか?」という心配は当然、ユーザーとしてはあるでしょう。
データサイズについては、データ出力のステップをコントロールしたり、並列計算を考慮したりなどで工夫しています。このソフトでは、HPC(High Performance Computer)におけるパフォーマンス面で、かなりリニアなスケーラビリティ(CPUのコア数ごとで比例して性能が高まる)が期待できるようです。
さて、先ほどの機構解析との連成の話と絡めて、ここで少しAdamsの話をしておきましょう。Adams自体は、歴史のある機構解析のソフトですね。
今回のDMSで展示されていた新製品は「Adams/Machinery」という名前です。「Machinery」ということで想像は付くでしょうが、つまり「機構解析において、機械要素を簡単に扱える」ということです。要は、ウィザードを活用することで、解析に至るまでのモデリングが容易ということですね。
例えば、遊星歯車の解析モデルも、設計諸元を入れることで簡単に作れます。これは単に、機構解析の効率化を図るだけではないでしょう。最近求められているような「多様な連成解析」まで考えたときに、「個々の解析の効率化も、全体の効率化にも寄与する」機能ともいえそうです。
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