オートデスク主催の「Fusion Connect 2026」で、KGモーターズの岡本崇氏が「制約を味方にするデザインとFusionの実践」と題し講演を行い、小型モビリティロボット「mibot」と3輪Eカーゴバイクの開発事例を基に、制約を魅力に転換する設計アプローチを解説した。
オートデスク主催の製造業向けイベント「Fusion Connect 2026」(会期:2026年1月23日)の個別セッションにおいて、KGモーターズ マーケティング本部 ブランド・戦略設計チーム デザインマネージャーの岡本崇氏が登壇し、「制約を味方にするデザインとFusionの実践」と題して講演を行った。本稿ではその内容をダイジェストでお届けする。
KGモーターズは、2022年7月創業の小型電動モビリティを開発するハードウェアスタートアップ企業で、広島県東広島市に拠点を構える。前身がYouTubeでの動画配信というユニークな成り立ちでも知られ、「小型モビリティロボットで世界をワクワクさせる」をミッションに掲げ、楽しさと持続可能性を両立させるモノづくりに挑戦している。
代表プロダクトは、小型モビリティロボット「mibot(ミボット)」だ。公表値によれば、全長2485mm×全幅1140mm×全高1470mmの1人乗りタイプの超小型電気自動車(EV)で、最高時速60km、航続距離100km(時速30km定地走行テスト値)、最小回転半径3.5m、最大積載量45kgとしている。
岡本氏は、自動車メーカーでエクステリアデザインを担当した後、プロダクトデザイン事務所で3輪の電動アシスト型カーゴバイク(以下、3輪Eカーゴバイク)の開発にも携わった経験を持つ。現在はKGモーターズに籍を置き、mibotのデザインに携わっている。「ワクワクする体験から新しいライフスタイルを生む」という岡本氏の思いと、KGモーターズの掲げるミッションが一致し、メンバーに加わったという。
今回の講演では、コンパクトかつ1人乗りという共通点を持つmibotと3輪Eカーゴバイクの2つのプロダクトを題材に、オートデスクの「Fusion」を活用し、制約のある中でコンセプトに見合うデザインをいかに実現したか、その取り組みが紹介された。
mibotは、トヨタの「ハイエース」に収まるほどの小型サイズで、ミニマルでありながらどこか懐かしさを感じさせる雰囲気をまとったモビリティだ。
「楽しく快適でワクワクする移動」「コストが低く経済的負担が軽い」「エネルギー効率が良く環境負荷が低い」という3つが、同社の目指す“持続可能な移動”に欠かせない要素である。これらを体現するmibotの車両価格(税込み)は110万円と、「一から作り上げたモビリティとしては破格の価格といえ、誰もが気軽に手にできる価格帯を実現している」(岡本氏)。
カテゴリーとして、mibotは原付ミニカー規格に該当し、車輪が3輪以上、乗車定員が1人、排気量が20cc超50cc以下と定められている(EVの場合は定格出力0.25kW超0.6kW以下)。さらに、全長2500mm以下、全幅1300mm以下、全高2000mm以下、輪距50cm超といった条件もある。これらの規格は、通常のクルマづくりとは大きく異なり、特にサイズ面での制約が大きいという。「このサイズに収めながら、1人がゆったりと楽しんで乗れるものを作るにはどうしたらいいかを突き詰めてきた」(岡本氏)。
そして、最も重要だったのがコストである。mibotを通じて新しいライフスタイルの実現を図るには、誰もが気軽に手にできる価格帯でなければならない。ここで生きてくるのが、車両の形状が左右だけでなく前後も対称になっているmibotのデザインである。これにより、同一パーツを車両の複数箇所で使い回すことが可能となる。
「ボディーは前後も左右も同じ形状になっており、唯一異なるのがヘッドライトとリアコンビネーションランプくらいだ。パーツ構成も、基本的には左右のドアが同一形状で、フロントとリアのフェンダーパネルも対角線で同じものを使っている。部品点数としてはかなり少なく、通常のクルマの半分以下に抑えられている」(岡本氏)
mibotはサイズもコンパクトで使用するパーツ数も少なく、通常の乗用車の2分の1〜3分の1程度に抑えている。軽量化により電費の効率も良くなる。「こうした特長を、80年代のようなワクワク感と元気があった時代の雰囲気を持ったカタチで実現したのがmibotだ」と岡本氏は説明する。
3輪Eカーゴバイクを開発した2016年当時、日本ではまだ荷物を運ぶための自転車(いわゆるカーゴバイク)という文化が根付いていなかった。そこで、欧州で先行していたカーゴバイクを日本で流行させ、広めたい。“荷物を運ぶ”という行為を楽しく魅力的なものにしたい、という思いから、これまでにないユニークなデザインの自転車を目指して3輪Eカーゴバイクが誕生したという。
前述のmibotと同様に、3輪Eカーゴバイクにも制約や条件が存在していた。それは、自転車としての「大きさ(サイズ)」、電動アシストのための「機構」、そして荷物を運ぶという「使い方」の3つである。「これらをうまくまとめながら、『ちょっと欲しくなる』『使ってみたい』『乗ってみたい』と思ってもらえるものを目指した」と岡本氏は振り返る。
サイズに関しては、3輪Eカーゴバイクは漕ぐ力をアシストする機能を備えた自転車、いわゆる電動アシスト自転車に分類されるため、時速10km未満で最大アシスト比1:2(人:電)、時速24km以上ではアシスト補助をオフにしなければならない。また、車輪は4輪以下、乗車定員は1人と定められており、車体サイズは全長1900mm以下、全幅600mm以下といった「普通自転車」枠の上限に収める必要がある。「自転車の大きさには上限があるため、そのサイズ内で荷物も運べるようにしなければならなかった」(岡本氏)。
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