また、モデリングだけでなく、Fusionのレンダリングもmibotの開発に大きく貢献しているという。
「通常のクルマづくりでは段階的に開発が進むため完成像が見えやすいが、mibotは全て同時進行で取り組んでいるため、自分たちが今何を作っている(設計している)のか分からなくなることがある。そこでレンダリングが役に立った。テクスチャーも全部入れて、『だいたいこんな感じになりますよ』というイメージを早い段階から見せるようにし、開発メンバーのモチベーション維持や目標の共有につなげた」(岡本氏)
プロダクトそのものだけでなく、mibotの工場における組み立て工程の検証にも、Fusionのレンダリングが役立っているという。岡本氏は「工場内のスペースや作業性の確認などを検討する際、VR(仮想現実)も活用するが、ディスプレイ上で気軽にビジュアライゼーションできる点もメリットとして感じている」と話す。
3輪Eカーゴバイクのデザインで最も苦労した点は、mibotのようなモビリティとは異なり、あらゆるパーツが意匠として外から見えてしまうことだ。「そのため、全てのパーツをデザインとして意識しなければならなかった」と岡本氏は述べる。
前方2輪、後方1輪の3輪Eカーゴバイクに採用されたサスペンションの設計では、そもそも自転車の設計経験がない状態からのスタートだったため、全てが手探りで、機構や材料などを勉強しながら進めていった。その後、ようやく形になったサスペンションは動作はしたが、部品点数が多くなり、その分重量も増えてしまったという。
「どうにかして改良したいが知見もない。どうしたらよいかと悩んでいた際に、以前お世話になった企業がカーボンファイバーを使っていたことを思い出し、軽量化にもなるし強度も出るのではないかと仮説を立てて、再挑戦した」(岡本氏)
その結果、出来上がったのが現在3輪Eカーゴバイクに採用されているサスペンションである。「設計にはFusionの解析やジェネレーティブデザインも応用しながら、どこまで部品を削れるかを追求するとともに、走行フィーリングが変わらないよう、そのバランスもとりながら設計を進めていった」と岡本氏は振り返る。
こうした苦労の末、当初岡本氏が設計したサスペンションと比較して重量は3分の1程度となった。見た目もカーボンファイバー板をそのまま生かし、サスペンションの装着部をリーフスプリング(板ばね)のようにアームと衝撃吸収を兼ねる構造とすることで、乗り心地の向上にもつなげることに成功した。
さらに岡本氏は、カーボンファイバーを用いる利点として、金属では実現できない構造が可能になる点を挙げた。「フォージドカーボンファイバーを鋳造の鋳型で成形し、インサートでボールベアリングを入れることで、本来であれば部品が4〜6点に分かれていたものを、ほぼ1〜2点に集約できた。ここもFusion活用のメリットの1つだと考えている」(岡本氏)。
講演のまとめとして岡本氏は、Fusionとの出会いが両プロダクトの実現に大きく貢献したと強調する。「制約とFusionの特長をうまく考慮できたことで、カタチに対する割り切りや製造に対する割り切りができた。その結果、スピードアップできたことがよかった。一からモノを作るときの初動ツールとして、Fusionは非常に相性が良く、使いやすいソフトだ」と岡本氏は評価する。
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