対話型AIで3Dモデルもパワポ資料も オートデスクが示す未来のモノづくりが熱いAutodesk University 2025(1/3 ページ)

Autodeskは年次イベント「AU 2025」を開催した。本稿では、初日の基調講演に登壇した同社 社長 兼 CEOのアンドリュー・アナグノスト氏の講演内容から、設計/製造に関するトピックスを中心に紹介する。

» 2025年09月29日 07時00分 公開
[八木沢篤MONOist]

 米Autodesk(オートデスク)の年次イベント「Autodesk University 2025(AU 2025):THE DESIGN & MAKE CONFERENCE」が、2025年9月16〜18日(現地時間)の3日間、米国テネシー州ナッシュビルで開催された。

 AUは、建築/エンジニアリング/建設(AEC)、設計/製造、メディア&エンターテインメントといった「Design&Make(デザインと創造)」の最前線で活躍するイノベーターが集い、モノづくりの新時代を切り開く最新テクノロジーやトレンド、アイデアを共有する場である。

 2025年のテーマは「ものづくりの新時代の幕開け」だ。AU 2025ではAI(人工知能)による革新を軸に、デザインと創造の未来を体現した。

 初日の基調講演にはAutodesk 社長 兼 CEO(最高経営責任者)のアンドリュー・アナグノスト(Andrew Anagnost)氏が登壇。同氏は、同社が描く未来像とクラウド戦略、AI活用の方向性を語り、参加者に向けて力強いメッセージを送った。本稿では、その講演の中から製造業関連の内容を中心にお届けする。

Autodesk 社長 兼 CEOのアンドリュー・アナグノスト氏 Autodesk 社長 兼 CEOのアンドリュー・アナグノスト氏

デスクトップからクラウド、そしてAI中心へ――7年間の進化

 アナグノスト氏はまず、2018年のAUで示したビジョンを振り返った。当時、Autodeskはクラウドを中心とするプラットフォーム戦略を掲げ、AIを活用する未来を見据えていた。

「2018年に私たちは未来のビジョンを示した。今日、皆さんはその未来を目にしている。私たちは未来を、そして未来への道筋を築いたのだ」(アナグノスト氏)

 この7年間で業界は、デスクトップからクラウド中心へ、そしてクラウドからAI中心へと進化した。ファイルをやりとりする従来型の形から、クラウド上で共有される粒状データ(Granular Data)へと移行し、複数の関係者がリアルタイムに連携できる環境が整いつつある。

 アナグノスト氏は「次は何か? 3年後、あるいは5年後に私たちは何を目にするだろうか」と投げ掛ける。

 同氏が描くのは、プロジェクトそのものがニューラルネットワークのように振る舞う世界だ。データが詰まったノード同士がつながり、情報を継続的に処理し、入力のたびに学習して進化する。設計意図が変わればリアルタイムでプロジェクト全体が進化し、1つの専門分野にとどまらず、エコシステム全体が動的に再構成される。そして、全員が常に最新かつ統合された“生きた真実の情報源(Living Source of Truth)”を共有できる世界が訪れる。

 アナグノスト氏は「まだ完全にはそこに到達していない。しかし、7年前に言ったときと同じように、それは確実にやってくる。そして過去よりも速いスピードで進んでいる」と述べ、AIが設計/製造を含む産業全体を根底から変革していくことを強調した。

プロジェクトライフサイクル全体をつなぐ産業別クラウド

 Autodeskは、AEC、設計/製造、メディア&エンターテインメントの各分野に向けて、「Forma」「Fusion」「Flow」という3つの産業別クラウドを展開している。これらは単なるクラウドストレージではなく、人、プロセス、データを結び付け、プロジェクトライフサイクル全体をつなぐプラットフォームとして機能する。以降、製造業向けのFusionの話題を中心にお届けする。

「Forma」「Fusion」「Flow」の3つの産業別クラウドを展開するAutodesk 「Forma」「Fusion」「Flow」の3つの産業別クラウドを展開するAutodesk[クリックで拡大] 出所:Autodesk

 2025年から、FusionにPLM(製品ライフサイクル管理)機能が統合され、プロジェクトの立ち上げから概念設計、エンジニアリング、製造、運用までを一貫した流れで管理できるようになった。これによりチームは全データを1箇所に集約し、分断されていた部門間の壁を越えてコラボレーションが進められる。

 さらにFusionには、Autodeskが長年培ってきたAI技術が既に組み込まれ始めている。AIが設計や製造のワークフローに直接関与することで、分野横断的な連携がより一層強化される。アナグノスト氏は「AIは人間の代替ではなく、創造性を増幅させる存在だ」と位置付ける。

FusionにPLM機能が統合され、プロジェクトの立ち上げから概念設計、エンジニアリング、製造、運用までを一貫した流れで管理できるようになった FusionにPLM機能が統合され、プロジェクトの立ち上げから概念設計、エンジニアリング、製造、運用までを一貫した流れで管理できるようになった[クリックで拡大] 出所:Autodesk
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