基調講演では、AIを統合したFusionが実現するエンドツーエンドのワークフローを示すため、家庭用調理家電(エアフライヤー)を題材としたライブデモが行われた。
まず、プロジェクトマネジャーがFusion上で新規プロジェクトを立ち上げ、AIエージェントの「Autodesk Assistant」を使ってメンバーを追加する場面からデモはスタートした。Autodesk AssistantはAutodesk製品群に組み込まれた対話型AIで、自然言語による指示に対応する。
例えば、「エアフライヤープロジェクトにメンバーを追加して」と入力するだけで、権限設定や通知などを自動化でき、煩雑な作業を大幅に削減できる。これにより、プロジェクト立ち上げ時のスピードと正確性が飛躍的に高まる。
続いて、生成AIを用いたコンセプトデザインが紹介された。テキストプロンプトでエアフライヤーの初期アイデアを指示すると、AIが瞬時に形状(BREPジオメトリ)を生成してくれる。生成された3Dモデルは単なるビジュアルではなく、編集可能なCADデータとしてFusionに取り込めるため、以降の設計作業がスムーズに進められる。なお、この技術はAutodesk Researchの「BrepGen」プロジェクトの成果によるものだという。アナグノスト氏は「これは世界初のワークフローだ」と強調し、空白のキャンバスから現実のCADデータへと至る一連の流れを示した。
エンジニアが設計を進める一方で、電子回路エンジニアはECAD/MCAD統合機能を活用して回路基板を配置し、機械的制約内で適合性を検証する。部品価格や在庫状況、関税の影響も半導体/電子部品ディストリビューターのAvnetのアドインを通じてリアルタイムで確認可能で、Fusionを離れずに意思決定のスピードが向上する。
別部門では「Inventor」を用いてエアフライヤー内部のコンポーネント設計を進めている。この部門ではデータ管理に「Vault」を活用する。なお、Vaultにも近くAutodesk Assistantが搭載され、図面更新や改訂アセンブリのリリースなどをAIで自動化できるようになるという。また、VaultはクラウドベースPLMの「Fusion Manage」とも直接連携し、設計変更が自動でFusionに反映されることで、単一の“真実の情報源(Single Source of Truth)”を維持できる。
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