40年変わらなかったCADが進化 「ニューラルCAD」が示すAI時代の設計の姿とはAutodesk University 2025(1/3 ページ)

Autodeskは年次イベント「AU 2025」を開催した。本稿では、新たに発表された「ニューラルCAD基盤モデル」の詳細について触れた、Autodesk Research 上級副社長のマイク・ヘイリー氏の講演内容をお届けする。

» 2025年10月06日 07時00分 公開
[八木沢篤MONOist]

 米Autodesk(オートデスク)は、2025年9月16日〜18日(現地時間)の3日間、米国テネシー州ナッシュビルで年次イベント「Autodesk University 2025(AU 2025):THE DESIGN/MAKE CONFERENCE」を開催した。

 初日のゼネラルセッション終了後に行われた「Autodesk AI」に関する基調講演では、Autodesk Research 上級副社長のマイク・ヘイリー(Mike Haley)氏が登壇し、AI(人工知能)が設計と製造にもたらすパラダイムシフト、そして同社が推進する「ニューラルCAD(Neural CAD)基盤モデル」の全体像と最新の研究成果を紹介した。

Autodesk Research 上級副社長のマイク・ヘイリー氏 Autodesk Research 上級副社長のマイク・ヘイリー氏 出所:Autodesk

設計とAIが融合する新たな時代の幕開け

 ヘイリー氏は冒頭、「人間と機械の根本的な関係が、キーボードとマウスだけでなく、自然言語、音声、画像、スケッチなどを含むものへと移行する未来を想像してみてほしい」と呼び掛けた。

 7年前の「AU 2018」では、この未来像を示す短いコンセプト映像を提示した。それは「『よし、この2つを結合して』『背もたれの上部を、今描いているこの赤線まで下げて』『それをラウンジチェアにして』といった音声コマンド」のモックアップであり、当時は実動作するAIデザインツールではなかったと明かした。しかし、同社はその2018年に「AI Lab」を立ち上げ、加速する変化に備えつつ、顧客を未来に導く準備を始めたのだという。

Autodeskは2018年に「AI Lab」を立ち上げた Autodeskは2018年に「AI Lab」を立ち上げた[クリックで拡大] 出所:Autodesk

 ヘイリー氏は続けて、「われわれはデザイン、ジオメトリ、構造、システム、物理、挙動に関するAI研究に、まだ未踏の領域が残っていることに気づいた」と語った。AI Lab発足以降、90本以上の査読付き論文を発表し、「AutodeskはCADにおけるAI研究の主要な発行元になっている」と胸を張る。

AI Labは90本以上のAI関連の査読付き論文を発表している AI Labは90本以上のAI関連の査読付き論文を発表している[クリックで拡大] 出所:Autodesk

 現在広く使われている生成AIは、言語や画像を中心に扱うタイプのもので、大規模言語モデル(LLM)や画像生成AIが代表的だ。これらは設計業務を進める上で不可欠な存在だが、あくまで言語と2Dビジョンに最適化されており、3Dの物理世界を直接推論することは難しい。この課題を解決するため、オートデスクはCADや製造業、建築などに特化したAI技術を開発し、3Dジオメトリや構造、システム、物理的挙動を直接扱える基盤モデルの研究を進めてきた。

 その最初の成果が、2024年に発表した3D生成AIプロジェクト「Project Bernini」(以下、Bernini)である。テキスト、スケッチ、点群など複数形式の入力を受け付け、コンセプト段階での探索や意思決定を支援するBerniniは、発表後に大きな注目を集めた。

3D生成AIプロジェクト「Project Bernini」のイメージ 3D生成AIプロジェクト「Project Bernini」のイメージ[クリックで拡大] 出所:Autodesk

 「アイデア出しの際に最も避けたいのは、テクノロジーやユーザーインタフェース(以下、UI)が邪魔をすること。そして、新しいプロジェクトの“白紙のキャンバス”に直面することだ。望む結果をどんな詳細レベルでも表現し、テクノロジーがそれを理解して、従来のCADの利点を生かしつつ迅速かつ反復的に進められるべきだ」とヘイリー氏は語る。過去10年のAI Labの研究から、コンセプト段階での探索がコストやサステナビリティなどの指標を大きく改善することも明らかになってきたという。

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