ルネサス エレクトロニクスは、デジタルテレビやプロジェクターに搭載されている高画質化処理機能を、同社のSoCに実装できる技術を開発した。2012年6月から、車載情報機器向けSoC「R-Carシリーズ」で利用できるようになる。
ルネサス エレクトロニクスは2012年5月23日、電子機器のディスプレイに表示されている画面の高画質化処理機能を同社のSoC(System on Chip)に実装できる「カラーマネージメントシステム」と呼ぶ技術を開発したと発表した。ハイエンドのデジタルテレビなどに搭載されている高価な高画質化処理ICの機能を、カーナビゲーションシステムなどの車載情報機器、スマートフォンやタブレットPCなどのモバイル機器のSoCに低コストで組み込めるようになる。同年6月から、同社の車載情報機器向けSoC「R-Carシリーズ」(関連記事)に対応したバージョンの提供を始める。モバイル機器向けSoC「R-Mobileシリーズ」に対応したバージョンの投入も予定している。
現在、高価格帯のデジタルテレビやプロジェクターには、ディスプレイ上での発色や輝度を画像本来の色彩で表示する専用の高画質化処理ICが搭載されている。一方、モバイル機器や車載情報機器では、最近になって高品位(HD)画質の映像が表示される機会が増えているにもかかわらず、高コストになる専用の高画質化処理ICは備えていなかった。
今回ルネサスが発表したカラーマネージメントシステムは、色と輝度の信号を高精度に処理する1次元や3次元ルックアップテーブル(LUT)を持つR-CarシリーズやR-Mobileシリーズ向けの製品となっている。同社がハイエンドのデジタルテレビ向けの製品開発で蓄積した技術やノウハウを基に開発した。同システムを使えば、R-CarシリーズやR-Mobileシリーズを搭載する機器の特性や利用環境に合わせて、顧客が高画質化機能を実装するのに必要となるパラメータ(設定値)を自動的に算出したり、設定したりできる。従来、SoCのLUTを使って高画質化機能を実装する場合、最適なパラメータを設定するのに高度な知見や一定の開発期間が必要だった。これに対して同システムは、ソフトウェアを使ってパラメータを容易に設定できるので、開発期間を大幅に短縮できる。また、高画質化に用いる画像処理ライブラリの使用数を、開発中の機器の価格帯に合わせて柔軟に変更できることもメリットになっている。
現在、提供可能な画像処理ライブラリは9種類ある。これら以外のライブラリも新たに開発中である。他にも、パラメータ調整用のGUI(Graphical User Interface)、機能効果確認用のシミュレータ、参照用の調整済パラメータなどを提供する。
デジタルテレビやプロジェクターに搭載されている高画質化処理ICのコストは数千円とも言われる。一方、ルネサスのカラーマネージメントシステムを使えば、「一桁程度安価なコストで高画質化処理機能を実現できる」(同社)という。
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