確実な実行計画を策定
改革プロジェクトは、成果を出して原資を獲得しながら推進しないと、長期間かつ大規模な活動に展開することが難しくなります。途中で大きな失敗をしてプロジェクトが継続できなくなると、プロジェクトメンバーのモチベーションも低下してしまいます。
大きな成果を確実に獲得するためのコツは、小さな成功を積み重ね、少しずつ範囲を拡大し、規模を大きくしていくことです。そのためには、図3のようなステップ・バイ・ステップのフェーズ・アプローチが効果的です。最初のステップでは部門レベル、次のステップでは拠点レベル、最後のステップでは企業レベル、といったような考え方です。
資金やプロジェクト推進のスキルを考慮した上で、「実行可能な計画を、確実に推進できること」を愚直に実践している企業・プロジェクトが意外と成功しています。
成果を出し続けることが意識改革につながる
成果を出し続けることが、モチベーションを維持しながら改革プロジェクト継続のポイントです。プロジェクトを継続して成功体験を共有することが、社員の意識改革にもつながりますし、範囲・規模を拡大して、企業レベルの業務改革につながっていくのです。
トップマネジメントの支援は最低1年半
業務改革は意外と時間がかかるものです。筆者はトップマネジメントの方々から、「3カ月で業務改革をして、成果を出すための方策を教えてほしい」などと相談されることがあります。しかし、単に新業務の設計やシステム導入だけでは、業務改革で本来求めるビジネス効果が得られるものではありません。社員の意識が変わってこそ本物です。新業務を設計し、それを支援するシステムを導入し、その業務の本当の価値を社員が理解して定着するためには、ある一定の時間が必要です。
筆者は、このようなトップマネジメントからの相談に対して、「改革プロジェクトに対する判断や支援を最低1年半継続してください」とお願いしています。この期間は経験的なものですが、プロジェクトチームが、トップマネジメントの支援なしで、プロセスを継続的に改善し運用していくためには、大体これくらいの時間が必要であると考えています。ビジネス環境の変化や変革要求のスピード感が、以前よりも速くなっているために、この期間は本来もっと短くあるべきなのかもしれませんが、本質的にあまり変わっていないように感じています。
社員はトップマネジメントの関心に敏感
もう1点重要なことは、社員はトップマネジメントの関心に敏感であるという点です。トップマネジメントは、改革プロジェクトのキックオフのときには出席し、プロジェクトに対する期待や、プロジェクトの意義の説明などをされることが多いのですが、以降の報告会では参加する機会が減る場合もあります(トップマネジメントの多忙さや、改革プロジェクトのフェーズ進行に伴う詳細化が背景にはあるようですが)。
これはとても残念なことなのですが、トップマネジメントの関心が薄くなると、社員の改革に対するモチベーションに少なからず影響を与えているように感じます。トップマネジメントの巻き込みの維持も、業務改革推進部門として重要な仕事なのです。
最後に、経営者・業務改革推進部門の方へのメッセージをまとめます。改革プロジェクト成功のポイントは、以下の3要素に集約できると考えます。
逆にこれらが1つでも欠けていると、失敗プロジェクトになるリスクが高くなります。
現在業務改革プロジェクトを遂行されている担当の方は、今回紹介した失敗パターンにはまっていないか、業務改革推進のポイントを踏まえて遂行できているか、をいま一度検証されてはいかがでしょうか。当たり前のことでも、意外と調整業務に追われて、欠如している点も見つかるのではないかと思います。
今回で、グローバルPLM、世界同時開発を可能にする製品開発マネジメントを終了します。今後も少しでも製造業の皆さまにとって役に立つ記事発信をしていきたいと考えています(連載第1回へ戻る)。
三河 進(みかわ すすむ)
NECコンサルティング事業部
(http://www.nec.co.jp/service/consult/services/07.html)
NCPシニアビジネスコンサルタント
システムアナリスト(経済産業省)
全能連認定マネジメントコンサルタント
PMP(米国PMI)
精密機械製造業、PLMベンダ、外資系コンサルティングファームをへて、現職。
専門分野は、開発設計プロセス改革(リードタイム短縮、品質マネジメント、コストマネジメント)、サプライチェーン改革(サプライヤマネジメント)、情報戦略策定、超大型プロジェクトマネジメントの領域にある。
自動車・電機・ハイテク・重工などのPLM・SCMに関する業務改革プロジェクトに従事中。
論文「モジュール化による設計リードタイムの大幅短縮」で平成20年度の全能連賞を受賞。
本記事は執筆者の個人的見解であり、NECの公式見解を示すものではありません。
世界市場を見据えたモノづくりを推進するには、エンジニアリングチェーン改革が必須。世界同時開発を実現するモノづくり方法論の解説記事を「グローバル設計・開発」コーナーに集約しています。併せてご参照ください。
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