実録! 製品設計・開発の業務改善 “成功者”の掟グローバルPLM〜世界同時開発を可能にする製品開発マネジメント(8)(1/2 ページ)

前回までで設計・開発プロセスの失敗パターンを見てきました。今回は、「じゃあ、どうしたらうまくいくの?」という疑問に答えます。

» 2011年08月24日 09時00分 公開
[三河 進/NECコンサルティング事業部,@IT MONOist編集部]

 前回は、日々コンサルティング業務に従事する筆者が聞いた失敗プロジェクトの数々を、類型化して原因を考察しました。連載最終回となる今回は、いよいよ、グローバルPLMを立ち上げ、世界同時開発を実現するためのプロジェクトを成功に導くヒントを紹介します。

業務改革推進において留意すべきポイント

1)本質的な課題認識と短期間の解決サイクル

できるだけ定量的な分析を実施

 事業課題を解決するために、改革プロジェクトは結成されます。課題・問題点を客観的に捉えるには、できるだけ定量的なデータに基づいて議論することが重要です。

 例えば、製品開発プロセスにおける手戻りが多いとします。このような場合には、設計変更の要因や件数の分析を行うことが考えられます。どの製品やユニットで設計変更が多いのか、設計変更の原因は仕様変更なのか、製造都合なのか、などを定量的に捉えます。定量的かつ客観的に課題を捉えることによって、改革の打ち手が大きく変わってきますし、ビジネス成果も変わってきます。

 これが、前述したプロジェクトの失敗原因である、目的の“ブレ”をなくすことや、改革活動の定義の正しさを検証するためのポイントとなります。

3カ月に一度は成果を発表

 改革プロジェクトの実施成果は、小さな成果でもよいので、少なくとも3カ月に一度は発表すべきです。「システム開発が大規模なので、成果を1年後でないと報告できない」という声をよく聞きます。しかし、キックオフをしてから、1年間何も成果報告をしないと、このプロジェクトチームは何をやっているのか、と忘れ去られてしまいます。

 よい改革活動を実施しているにもかかわらず、プロジェクトメンバーだけがその価値を知っている、というのももったいない話です。要件定義のポイントが明確化した、業務トライアルの実施結果が判明した、デザインレビューの時間を短縮できた、など小さな成果でもよいので順次発表して、業務改革の意義を発信し続けることです。改革プロジェクトの成功のためには、社員の意識改革が必須です。成果の発信が、企業全体の意識改革につながっていきます。

図1 図1 業務改革の推進ステップ

2)素早い意思決定と展開を可能とするプロジェクト体制

計画段階から関連部門のキーマンの巻き込みは必須

 計画段階から関連部門のキーマンを巻き込んでおくことは、社内のコンセンサスを得るための重要な活動です。製品開発プロセスなどの業務改革プロジェクトは、組織横断的な活動になることが多く、製品開発部門の業務改革が製造部門や調達部門、さらにはサプライヤにまで影響を与えることが珍しくありません。影響が出る部門のキーマンをプロジェクトにあらかじめ巻き込んでおくことが、改革をスムーズに進め、ビジネス成果を獲得することにつながります。

計画段階から実行段階の体制を意識しておくこと

 計画段階から実行段階の体制を意識して計画を立案することも、コンセンサスを得やすくするための1つの方法です。計画段階でのあるべき姿の策定は、各部門から選出されたメンバーだけで決めていくことは可能です。しかし、実行段階では各部門の実務担当者が納得していて、調整が完了していないと、前進できなくなってしまいます。

図2 図2 組織横断での業務改革プロジェクト体制の例

世界同時開発を推進するには?:「グローバル設計・開発コーナー」

 世界市場を見据えたモノづくりを推進するには、エンジニアリングチェーン改革が必須。世界同時開発を実現するモノづくり方法論の解説記事を「グローバル設計・開発」コーナーに集約しています。併せてご参照ください。



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