新商品が売れない理由はガチガチの縦割り業務分担のせい!? 日本的デザインレビューの慣習を超えて「ステージゲートモデル」の開発プロセスを実現するためのヒントを紹介します。
日本はこれまで世界でGDP2位の経済大国であったため、日本の市場をターゲットとして商品を供給することで、十分に収益を上げることができました。しかし、GDPは中国に抜かれ、日本は第3位に転落したとの発表がありました(前回へ)。
図1は日本、アメリカ、中国、ブラジルのGDPトレンドです。日本の経済成長は1995年ごろから停滞気味ですが、中国を中心としたアジア市場、ブラジルを中心とした南米市場の経済成長が著しいことが分かります。そのため、日本だけでなく、アジアや欧米企業もこの市場を狙っており、今後さらに競争が激化すると予想できます。
多くの日本の製造業はこれまで中国やタイなど、アジアの新興国に販売拠点や生産拠点を設立してきました。しかし、新興国を市場として本格的に売上を伸ばすには、現地で売れる新商品を継続的に開発できる能力が必要なのではないでしょうか。
新興国で売り上げや収益を伸ばそうとしている企業は多いと思います。しかし、日本でもなかなかヒット商品を出すのが難しい時代です。新興国には韓国や欧米企業が既に進出していますので、そこでの競争は日本市場におけるそれよりもさらに激しいと考えることができます。日本の製造業は、グローバル競争でも勝ち抜ける商品開発プロセスを持っていないと、この市場で勝ち組になること難しいのではないでしょうか。新商品を売るという視点における、日本の製造業の開発プロセスの問題点を確認していきましょう。
図2は、新商品投入遅延による販売機会の損失を表現しているモデルです。このモデルは、新商品の投入が遅延すると、新商品を販売する機会を逸し、結果として十分な市場シェアを獲得できず、大きく売り上げを減少する、ということを示しています。先行者利益とも言われますが、最初に市場に革新的な商品を供給した企業が市場のリーダーシップを取れるという考え方に基づいています。
新商品の市場投入が遅れると、マーケティング活動により市場のニーズを吸い上げて、よい商品企画を立案しても、市場に出たころにはニーズそのものが変化しているかもしれませんし、競合が先に同様なコンセプトの新商品を発売しているかもしれませんので、成功する確率は下がります。
新商品の市場投入が遅れる要因を深堀してみます。日本の製造業は縦割り組織になっているため、組織の壁を越えた協調開発がやりづらくなっていることが挙げられます。
例えば、
といったようなことです。
意思決定の遅延や手戻りは、新商品のコンセプトが決定した後の、設計・生産準備・テストなど一定時間がかかる作業プロセスにしわ寄せを生じることになります。結果的に、新商品を市場に投入する時期が遅延するという問題を招いてしまうのです。
縦割り組織の弊害として、「バケツリレー式」の開発プロセスであるために、商品コンセプトが、開発プロセス中で首尾一貫性が保てなくなる、という問題を挙げることができます。
「バケツリレー方式」というのは、市場のニーズ調査はマーケティング部門、新商品の企画は商品企画部門、製品設計は製品開発部門、という具合に、フェーズが進むごとに担当する部門が「バケツリレー」のように引き継がれる開発プロセスのことです。
具体的には、マーケティング部門や商品企画部門が立案した新商品のブランドやコンセプトが、フェーズが進行するにつれて微妙に変化し、出荷が近づくころには、何か当初のコンセプトと異なる商品になっていた、といった事象です。
このようなことが、新商品が売れない理由になっているのではないでしょうか。
世界市場を見据えたモノづくりを推進するには、エンジニアリングチェーン改革が必須。世界同時開発を実現するモノづくり方法論の解説記事を「グローバル設計・開発」コーナーに集約しています。併せてご参照ください。
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