個別受注型生産でもモジュラー設計は実現できる! 受注生産型製造業がモジュラー設計を取り入れる際の影響範囲や業界展望を整理する
設計開発の海外シフトやグローバル開発におけるビジネス環境変化、それに対応するための課題、今後のモノづくり戦略の在り方や最新の改革ソリューション動向を紹介する。(編集部)
通常われわれが消費者として購入するのは、コンシューマ製品(家電や自動車など)で、基本的に企画量産品です。最近では自動車も多様化していますので、ディーラーで自分の好みをスペックとして登録し、ほぼオーダメードされた自動車を購入することができます。
しかし、それらの多様化したコンシューマ製品を支えるのが、多様な部品であったり、それらの部品や製品を加工・組み立てするための製造装置、さらにそれらの製造装置やプラントを稼働させるためのプラントやプラント設備であったりします。
コンシューマ製品が多様化した分、対応する部品や製造装置、プラントやプラント設備も多様化しています。今回のテーマである個別受注型製造業やセミオーダー型製造業とは、そのような製品を製造する位置付けにあります。
前回は企画量産型製造業の市場のグローバル化についてご紹介しましたが、今回テーマの個別受注・セミオーダー型製造業においても、市場のグローバル化への方向性は同様です。
これらの業種においては、従来は比較的内需指向の業種が多かったと思いますが、最近では新興国のローカル企業に対して販売する需要が急伸しているようです。
自動車や家電など自社ブランドで販売するコンシューマ製品では、商品企画やブランド浸透、現地での販路拡大などが課題になりますが、部品メーカーではローカル企業との取引により、販路を拡大していくことが可能になります。
設備関係では、製品の規模や複雑性のため、設計や製造プロセスの海外シフトはやや遅れているようですが、部品メーカーではすでに設計や製造プロセスの海外シフトが急ピッチで進められています。
個別受注・セミオーダー型製造業では、受注してから設計し、資材調達、製造とシリアルプロセスになるため、受注から納入までのリードタイムが長くなる傾向があります。
例えば設備製造の場合を考えると、国内で製造した製品は船積みなどで輸送するため、物流リードタイムも無視できません。
こうした企業が海外に製造拠点を持つローカルベンダと競合した場合、物流リードタイムの差を縮めるために、国内メーカーは設計や製造のリードタイムを短縮する努力を図らなければなりません。そのために、国内メーカー各社は、設計の標準化やユニット・部品の共通化の推進を急速に進めています。
某大手重工業でも、モジュラーデザイン・マスカスタマイゼーションというコンセプトを掲げて、モノづくり改革を推進していることを公表しています(参考文献1)。
個別受注・セミオーダー型製造業では、モノづくり改革の中核として、モジュール化の取り組みを進めているのです。
モジュール化の定義があいまいになっていますので、ここで定義しておきましょう。
設計のモジュール化は、設計のやり方をモジュラー設計にし、製品の多様化と部品最小化の両立を目指し、設計の効率性を高めることが狙いです。
一方、生産のモジュール化は、工程種類数を削減し、工程数も削減することで、生産の合理化を図り、生産性向上を狙いとしています(参考文献2)。
すりり合わせ製品(インテグラル)と組み合わせ製品(モジュラー)という言葉をよく耳にします。それらの違いを確認しておきましょう。
組み合わせ製品(モジュラー)では、製品の機能と製品の構成が1対1の対応に近く、部品間のインターフェイスも標準化されているため、それらを組み合わせるだけで、多様な製品やシステムにできるものです。パソコンや周辺システムとの組み合わせがモジュラーに相当します。
一方、すり合わせ製品(インテグラル)では、製品の機能と製品の構成が多対多になっており、部品間インターフェイスも特殊的であることが特徴です。従って、新規製品を開発するためには、新たにユニットや部品を設計する必要があります。
世界市場を見据えたモノづくりを推進するには、エンジニアリングチェーン改革が必須。世界同時開発を実現するモノづくり方法論の解説記事を「グローバル設計・開発」コーナーに集約しています。併せてご参照ください。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.