それではすり合わせ製品では設計のモジュール化は難しいのでしょうか? 答えはNOです。スペックと構成の関係を明確化し、変動ルールを整流化すれば、設計のモジュール化はできる可能性があります。
図3を使って解説しましょう。この図は横軸にスペック、縦軸に構成を取り、スペックと構成または部品の関係のあるところにマーキングしていくマトリクスです。これは固定・変動分析と呼ばれ、スペック変動に対して、変動する部品を特定する分析手法です。
固定品目は、スペック変動に影響を受けないため、すべての製品バリエーションで共通化が可能な部品であるということが分かります。
変動品目は、スペック変動により異なる部品が必要になるということです。従って、最大スペックの種類分の異なる部品が必要になります。ただし、これも集約を掛けることにより、部品種類数を削減することができます。
準固定品目は、プラットフォームが変わったときにだけ変動する部品です。プラットフォームとは、例えば自動車の場合だと車台に相当し、複写機だと高速・中速・低速などの大分類(これも全体フレームや感光体直径が変わるので自動車の車台に近い概念です)に分けて設計されます。
このように固定変動分析を行い、スペックに対する部品の変動ルールを定義することで、製品の多様化と部品の最小化の両立を目指すことができます。従って、すり合わせ製品(インテグラル)でも、設計のモジュール化は可能であるといえます。
このようなルール化、分析の下、目指すところは、スペックが決まればBOM(部品表)が決まるようにする、というものです。
しかし、実はこのようなコンセプトはすでにさまざまな業種で実現されています。
例えば、プレハブ住宅がそうです。ハウスメーカーで注文建築された方の中には、ハウスメーカーの営業やインテリアコーディネーターからのスペックに関する質問やプラン図の作成・確認により、精度の高い見積もりや部品構成表を提示されたご経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
なぜこうしたことができるのかというと、住宅用の資材(サッシやキッチンなど)や、梁(はり)・柱などの構造用部材も設計がモジュール化されていて、スペックに対して部品が決定されている仕組みが導入されているからなのです。
自動車の場合も同様です。自動車購入の際、ディーラーでスペックを選択するだけで、正確な見積もりが算出できますし、実装できないオプションの組み合わせはすぐに指摘されることもあります。
モジュール化は、コンシューマ製品の見積もり段階で利用されていることが多いと思いますが、発電所のプラント設備や、プラント空調などの産業機械、デジタル放送設備などでも、この考え方はすでに応用されているのです。
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