販売プロセスでは、前述したように、受注コンフィグレータという仕組みを利用して、スペックを選択するだけで部品構成表を出力し、正確な見積もり算出ができるようになります。BtoBのビジネスで利用するためには、これに特注要素を加味する必要があります。
この仕組みにより、担当者の見積もりスキルによる変動を最小化することができ、海外の現地法人でも同様の見積もりができるようになりますので、市場のグローバル化に大きく貢献することが期待できます。
モジュール化により事前に設計情報を登録しておき、受注案件によってそれらを取り出した後、インターフェイス設計(配管設計や、設置場所に適用するための設計)を実施します。共通モジュールの活用により、従来の設計工数よりも大幅に削減できる可能性があります。
3次元設計では、ベースとなる部品を3次元CADのライブラリに登録しておき、スペックに対応するライブラリ部品をワークスペースに取り出した後、寸法駆動などの編集設計をすることも考えられます。
モジュール化と3次元CADのパラメトリック機能を組み合わせることで、より多様な部品や製品の効率的設計が可能になるということです。
さらに、上記ライブラリに登録した3次元モデルに、ナレッジ(例えば製造できない部品を設計できないように寸法に制約を入れておくなど)を組み込んでおくと、経験の少ない設計者と経験の多い設計者の差を小さくすることも可能になります。海外などで多くの設計者を急速に育成する必要のある環境では、このような考え方・方式も有効になるのではないでしょうか。
調達については先行手配プロセス(フォーキャスト)が改善される可能性があります。調達プロセスにおける受注から納入までのリードタイム短縮のポイントは、在庫を考慮しながら、いかに長納期部品を先行手配できるかです。
前述した販売プロセスでの見積もり時に、見積もり構成を出力できることを説明しました。その情報を先行手配に活用することも有効です。
見積もり案件の受注確度にもよりますが、受注確度が高いと判断できれば、先行手配をするか、サプライヤに発注フォーキャスト情報として流すことができます。ただし、見積もり案件の受注確度の見極めを誤ると、デッドストックを招くことになりますので、注意が必要です。
製造プロセスでは、中間品の多くをモジュール化することで、生産リードタイムを短縮することが可能になります。標準化したモジュールを中間品在庫として保有し、受注後モジュールを最終組み立て工程で組み合わせて、最終製品に仕上げる方式です。
最後に、<販売⇒設計⇒調達⇒生産⇒出荷>の流れをコントロールするための情報システムの全体像をご紹介します。
PLMの領域では、案件管理やスペック、モジュールのマスター管理を行います。設計からの標準設計成果物としてのモジュール構成や3次元モデル、図面を取り込みます。
ERP(生産管理)の領域では、受注前の案件情報や、先行発注のプロセス、受注後のBOMを管理し、確定発注情報管理や製造日程などのプロセス管理を行います。
このように、目的別のBOMを連携させながら、全体をコントロールして、受注から納入までのリードタイム短縮と、在庫の最小化を狙います。
世界市場を見据えたモノづくりを推進するには、エンジニアリングチェーン改革が必須。世界同時開発を実現するモノづくり方法論の解説記事を「グローバル設計・開発」コーナーに集約しています。併せてご参照ください。
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