一般的なソリッドベースの3次元CADの場合、部品をモデリングする際の基本操作は、以下の3種類のコマンドを多用します。
抜き勾配に関しては、「ドラフト」が重要な役割を果たすことはいうまでもありませんが、基本形状作成コマンドの使用の際には、抜き方向に注意が必要です。
成形部品をCAD上で作成するとき、原点の方向X・Y・Zのいずれかを金型抜き方向に合わせる必要があります。そのうえで、基本形状作成コマンドでモデリングをする際には、金型の抜き方向に対し垂直な平面に、2次元断面を作成し(図11)、金型の抜き方向に押し出し形状を作成(図12)していくことが鉄則です。
そうでなければ、気付かないうちにアンダーカット形状を作成してしまうことがあり、後で手戻りが発生してしまいます。
「スイープ」コマンドでは、軌道に沿って断面形状を移動させて形状を作成しますが、2次元断面を作成する際に、抜き方向を指定しておくことが必要です。軌道が3次元カーブとなり、2次元断面が抜き方向をキープして移動しない場合にはアンダーカット形状を作成してしまうことが多いので避けるべきです。
「ロフト」コマンドでは、複数の断面形状を結合させて形状を作成しますが、スイープと同様に、2次元断面の作成時に抜き方向を決めて作図することが必要です。
「シェル」コマンドを使用すれば、必ず、均一な肉厚となります。CADによっては、面ごとに肉厚を変える設定ができますが、原則、均一な肉厚にするべきです。
また、キャビティ側に抜き勾配を付けた後にシェルコマンドを使用すると、コア側にも自動的に抜き勾配が付きますので、 シェルの使い方が、成形品のモデリングでは最も重要といっても過言ではありません。
しかしながら、形状が複雑過ぎるとシェルがエラーとなって機能しなかったり、下図のように薄肉化できない部分が残るケースもあります。モデリングの途中でシェルを使い、残りはシェル以外のコマンドを使い、形状を作っていくことが必要となります(次回に続く)。
佐藤 正(さとう ただし)
1971年埼玉県生まれ。1994年大手金型メーカーに入社。主に家電・自動車部品の金型設計に携わる。アメリカ工場における量産金型立ち上げ、顧客の製品設計支援などを経験した後、2003年ウィッツェルに参画。自動車部品・家電製品など多岐にわたる製品のコストダウンや品質改善のために、後工程(金型製作・射出成形)を考慮した3次元設計&モデリングの指導を行う。
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