肉厚均一でキャビティにもコアにも抜き勾配のある薄肉形状を作成するには、シェルコマンドを使う。重要なツボを押さえれば効率よくモデリングできる
前回は射出成形の概要と、肉厚や抜き勾配について解説しましたが、今回はそれより一歩深く踏み込んでいきます。金型構造や、キャビティとコアのことなどをもう少し詳しく説明したうえ、成形部品のモデリングテクニックも紹介します。
金型構造は、以下の5つからなります(以下、図1)。
金型に樹脂を充填後、以下の順序を経て製品が出来上がります。
そのためキャビティ・コアは、以下のような特徴を持ちます。
この特徴の違いから、キャビティは通常、製品の体裁側を形作り、コアは製品体裁面の内側を形作ることが一般的です。
前述のように、キャビティ側には、離型のために抜き勾配が必要であると同時に、体裁面を形成するために、以下のような点に注意しながらモデリング進める必要があります。
自動車、家電製品に代表されるコンシューマの製品の場合には、意匠デザイナーが、製品の外観に責任を持つことが一般的です。従って、デザイナーが作成するデザイン図を参照しながらモデリング行っていきます。
デザイン図は、2次元図面で描かれたり、3次元モデリングで表現されたり、など決まった方法はありませんが、部品の製造方法にまで留意して外形を決めるとは限りません。よって、デザイナーの指定する外形形状には、抜き勾配がないことも多く、以下のようなトラブルに遭遇するケースが多く発生します。
以上のような問題を回避するには、デザイン図をモデリングする際に、形状の意図をよく確認し、抜き勾配を入れるのか入れないのかを自分1人で決めずに、関係者と協議、決定したうえでモデリングを開始することが非常に重要です。
外装で使う部品は塗装などの表面処理を加えることで美しい仕上がりになります。しかし、塗装をせずに、金型のキャビティ表面に、シボ加工というエッチング処理をし、製品に転写させることで、成形品をきれいに仕上げることもできます。
シボ加工は塗装をするほどのコストを掛けられない部品によく使われます。
成形品の表面に凸凹を作るために、抜き勾配は3〜5度ぐらいはないと離型する際に、「かじり」(引っかき傷のような跡が残ること)という不良が出てしまいます。抜き勾配は、シボの種類によって変わるので、成形品の表面に、どのシボを利用するのかを前もって確認のうえ、抜き勾配を決めてモデリングする必要があります。一般的に、シボの探さが10μmmに付き、勾配を1度余計に設けなければいけません。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.