キャビティ側とコア側の合わせ面を「パーティングライン」と呼びます(図6)。パーティングライン部分は、製品部で必ずシャープコーナーとなります。
金型形状がプラスチックに転写されますので、金型のキャビティ側とコア側の特徴がそのまま部品に反映されます。コア側には、製品を取り出す工程に使うエジェクターピンの跡が付きますが、キャビティ側は、溶融樹脂の注入口側ですので、溶融樹脂の流路(ゲート)の跡が残ります。通常プラスチックの外装部品においては、エジェクターピンの跡がないキャビティ側が外側(意匠面側)に使われます。
キャビティ側・コア側とも、図7のような「アンダーカット」部があると、金型から部品を取り出すことができません。
また「抜き勾配」といわれる傾斜が形状にあることが条件になります。どうしてもアンダーカットが必要な場合、スライドという金型構造を使ってアンダーカット部を作成することが可能です。
高温で溶けたプラスチックを流し込み、冷却して固化するというプロセスで製造されますので、それに適した形状になっていないと、以下のような代表的な成形不良(部品不良)が発生します。
成形部品の肉厚が極端に薄い場合、溶融樹脂が流れにくくなりますので、溶融樹脂が金型の隅々まで充填されない不良(ショートショット)が発生します。
成形部品の肉厚が局部的に厚い場合、成形部品の表面に「ヒケ」と呼ばれるくぼみが発生します(図8)。最も発生率が高い外観不良です。
冷却により、金型表面からプラスチックの固化が始まり、それから少し時間を置いて、厚肉部の内部の固化が始まります。溶融したプラスチックが固化する際には収縮しますが、厚肉部の内部のプラスチックが収縮する際に、最初に固化した金型表面部分内側に引き込まれることが原因です。
また、射出の際に高い圧力が均一に掛からないため、厚肉内部に気泡(ボイド)が発生する場合もあります(図9)。気泡とは、成形部品の肉厚の中心部付近に空洞が発生する現象です。「ボイド」「巣」(す)などともいわれ、厚肉のボスの根元などによく発生します。
成形部品の肉厚が急激に変化した場合(「偏肉」といいます)、溶融樹脂の固化時間の差によって、成形部品に変形(ソリ)・フローマークが発生します。フローマークとは、溶融樹脂の先端が固化し、後から流れ込んでくる溶融樹脂に押されて、しま模様が発生する現象です。外観不良ですが、塗装をする場合は問題ないとします。
成形部品の抜き勾配が足りない場合、金型から成形部品が抜けずに残ってしまう現象が起きます。成形機を停止せずに次の成形プロセスに入り、部品を金型に残したまま溶けた樹脂を注入してしまうと、金型を破損させるという大事故になる場合もあります。
以上、代表的な成形不良を引き起こす原因はすべて、抜き勾配・肉厚に関連していることが分かると思います。
成形部品の設計において、以下のように留意すべき基本的なポイントがあります。
肉厚や抜き勾配を決める際には、部品コストも重要な要素になります。また、成形部品のコストの内訳は、一般的に以下のようになります。
成形部品の肉厚が厚い場合、金型内への溶融材料の充填はスムーズに行われますが、固化時間が長くなるので、冷却工程が長くなります(冷却時間は肉厚の2乗に比例します)。冷却時間が長くなるということは、成形サイクルが長くなるので、成形加工費がアップします。
また、単純に成形部品の重量が重くなりますので、材料費がアップします。従って、コストの大部分を占める材料費・成型加工費には、肉厚の設計の仕方が大きくかかわってくるということになります。
以上のことから、抜き勾配付けおよび適切な肉厚の設定と、均一な肉厚に設計することが最初に注意すべきポイントとなります。
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