開発技術は、組み込みソフトウェアを作成する際に駆使する技術スキルであり、開発プロセスにおけるタスクやアクティビティの作業遂行能力を指します。ETSSでは、新たな標準や体系を作ることを極力避け、既存の標準や知識体系を活用すべきと考えています。開発技術においては、SLCP(JIS X 0160)における開発プロセスや情報処理技術者試験のスキル基準を利用しています。
開発技術スキルカテゴリの第1階層では、
という10のプロセスを定義しています。これらのスキル項目は、SLCPの開発プロセスを利用しています。
各プロセスにおいて求められるスキルは、この工程で作業するアクティビティやタスク、作業です。これらのスキルは第2階層以下に定義し、これには情報処理技術者試験のスキル基準を利用しています。具体的には、上流のプロセスやシステム評価にはテクニカルエンジニア(エンベデッドシステム)を利用し、実装近辺のプロセスにはソフトウェア開発技術者のスキル基準を利用しています。
管理技術は、組み込みソフトウェア開発を適切かつ円滑に運用するための技術スキルです。管理対象をプロジェクトと開発プロセスの2つとして、それぞれを第1階層に定義しています。
プロジェクトマネジメントは、ITスキル標準(ITSS)における「プロジェクトマネジメント」の職種共通スキル項目を参考にしています。この粒度では、IT系開発のマネジメントと大きな違いはないと考えています。
開発プロセスマネジメントは、SLCPの支援プロセスなどを参考にしています。開発技術やプロジェクトマネジメントでは表現し切れない管理技術をここで定義しています。
IT系システム開発とほぼ同じスキルとはいえ、組み込みソフトウェア開発特有のスキルもあるはずです。それらは、第3階層以下で提示されるものと考えています。開発方法や開発対象が異なれば、品質やリスクなどの管理に関する具体的な項目も変わってくるでしょう。第1、第2階層で組み込みソフトウェア開発特有のスキルが見えてこないことに関してはこのように理解していただき、一方でIT系システム開発の管理技術を有効活用したり融合させることに期待しています。
スキル基準は技術を階層的に整理します。その階層化の際、技術の共通性や親和性を考慮することで、スキルのパフォーマンスだけでなく、ポテンシャルまでも見える化できるのです。
例えば、MPEG-1とMPEG-4のスキルを有しているがMPEG-2の経験がなくスキルを有していない場合、「この人材はMPEG-2のスキルのポテンシャルを持っている」と表現できます。DCTなど、共通性のあるコアな技術をマスターしていれば、異なる部分を理解するだけでスキルを応用可能です。開発現場では、普段からこのような考え方を行っていると思います。スキル基準によって、このようなポテンシャルも見える化できると期待されています。
今回は、ETSSスキル基準について解説しました。ETSSスキル基準はフレームワークであり、道具です。これを有効活用し、人材育成と人材活用による組み込みソフトウェア開発力強化を実現してほしいと願っています。
次回は、ETSSキャリア基準について解説する予定です。(次回に続く)
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