キャリア基準は各職種の役割を明確化するとともに、キャリアパスによってエンジニアの目標設定を可能にする
経済産業省が行った「組込みソフトウェア産業実態調査」によると、現在約17.5万人が組み込みソフトウェア開発に従事しています。情報処理サービス産業に従事する人数よりも少なく、組み込みソフトウェア開発者の認知度はまだまだ低いといえます。組み込みソフトウェアを搭載する製品は多岐にわたります。この多様性が、組み込みソフトウェアの開発者をつかみにくくしてしまっているのかもしれません。
現在では組み込みソフトウェアの重要性が増し、片手間に独学的なやり方で対応できる時代ではなくなってきています。ソフトウェアエンジニアリングやシステムエンジニアリングといった、先人の知恵が整理されているエンジニアリング手法やツールを利活用することが不可欠です。ある意味、プログラミングスキルだけでは太刀打ちができないのです。プログラミングスキルも必要ですが、要求分析からテスト・検査に至る開発の作業を確実に遂行し、確実にマネジメントすることが求められています。
2005年6月に開催されたESEC(組込みシステム開発技術展)の会場において、IPA/SECが行った調査結果があります。この中で注目すべきは現在使用している職種名称で、「プログラマ」「SE」「マネージャ」といった呼称が多くを占めています。
この結果はわれわれの予想どおりでしたが、ここまではっきりと数値で提示されると正直驚くものがあります。開発現場で求められているのは、プログラミングスキルだけを有する開発者ではなく、設計からテストに至る開発ができる人材です。「プログラマ」と呼びつつも、開発現場では設計からテストの作業まで実施していることでしょう。つまり、実際の職務内容と職種名称が乖離してしまっているのです。
われわれはこのような呼称を最適化し、それによってエンジニアリングの観点で適材適所の配置や人材育成ができる環境の実現を目指しています。組み込みソフトウェア開発の役割は「組み込みソフトウェアエンジニア」、組み込みソフトウェア開発マネジメントの役割は「組み込みソフトウェア・プロジェクトマネージャ」であるという相場観を醸成したい。その結果、人材育成として何をどう学び経験すべきか。人材活用としてどのような戦略・戦術を取るべきか。これらに対してエンジニアリングに基づいて行動できるようにすべきです。
IT系やエンタープライズ系といわれるドメインでは、2002年末にITスキル標準が公開され、相場観が共有されつつあります。組み込みソフトウェア開発においても同様に、ETSSのキャリア基準によって相場観の共有を実現していきます。
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