キャリア基準は、ITスキル標準と同様に7段階(レベル1〜7)のキャリアレベル(注)を設定しています。スキル基準のスキルレベルは4段階(レベル1〜4)となっており混乱を招きかねない点は否めませんが、ITスキル標準との親和性からこのような形になっています。
キャリアレベルは、経済的貢献と責任の度合いを基にレベル定義を行っています。エントリレベルは自律した状態ではないことから経済的貢献はマイナスであり、責任の範囲も限定されます。ミドルレベルは自律した状態であり経済的にも貢献し、一定の責任も果たし背負う立場にあるといえます。ハイレベルは社内や市場をリードし、組織への経済的貢献に大きく寄与するというイメージです。
スキル基準のスキル項目やスキルレベルには、まったく経済的概念が含まれていません。高い技術スキルを有しているからといって、高い経済的貢献をするとは限らないからです。これは、技術スキルと技術の市場性にも関係しています。需要が高い技術スキルは経済的に需要があり、経済的に貢献する可能性があります。しかし、多くの供給があれば、その技術スキルの経済的な価値は低下します。つまり、マーケットにおける需要と供給および組織の経営戦略や技術戦略に影響するものです。
経済的貢献や責任を果たす際は、スキル基準の技術スキルだけでなくパーソナルスキルやビジネススキルも重要となります。実際に成果を出すためには、技術スキルや知識を使って何らかの行動を起こす必要があります。行動を実現するには、プロジェクトメンバーなどに影響を与えることが求められます。この影響を与えるために、コミュニケーションやリーダーシップといったパーソナルスキルや経営やマーケティングといったビジネススキルが必要となるのです。
キャリア基準においては、この観点に基づいてパーソナルスキルとビジネススキルについても挑戦的に提示しています。組み込みソフトウェア開発者というと、技術偏重なイメージも根強く存在します。大規模・複雑化が進む中、QCDを確保するには技術以外のスキルの教育や訓練も必要であり、開発力強化には欠かせないと考えています。
キャリア基準にて職種を明示することで、組み込みソフトウェア開発者は自分の立ち位置が確認できるようになります。現在の職種とキャリアレベルがどこにあるかを認識し、将来はどこを目指すのかをイメージしやすくなるでしょう。これは個人としてのキャリアアップやキャリアシフトという観点でも有効ですが、上長とのコミュニケーションにおいても非常に有効です。スキルやキャリアといった共通の相場観を使ってコミュニケーションすることは、コミュニケーションギャップやロスを少なくし、組織としての開発力強化にも貢献することが期待されます。
キャリア基準は、2006年度にVersion1.0を策定し、6月には公開する予定です。責任の明確化や職種ごとのスキル明示など、Draft版に対する各種意見を盛り込みながら、現場で使えるキャリア基準を目指して策定を進めています。
次回は教育カリキュラムについて解説します。(次回に続く)
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