日本製鉄がUSスチールを2兆円で買収、粗鋼生産能力は8600万トンに:製造マネジメントニュース
日本製鉄は、同社の米国子会社である NIPPON STEEL NORTH AMERICAを通じ、米国の鉄鋼メーカーであるUnited States Steelを買収することを発表した。
日本製鉄は202312月18日、同社の米国子会社である NIPPON STEEL NORTH AMERICA(以下、NSNA)を通じ、米国の高炉/電炉一貫の鉄鋼メーカーであるUnited States Steel(以下、USスチール)を買収することを発表した。
日本製鉄では「総合力世界No.1の鉄鋼メーカー」として「需要の伸びが確実に期待できる地域」「技術力や商品力を生かせる分野」において鉄源一貫生産体制を拡大し「グローバル粗鋼1億トン体制」の構築を推進している。一貫生産体制の拡大に向けては買収や出資を基本戦略としており、2019 年12月にはインドのEssar Steel India、2022年3月にタイのG steel、GJ steelを買収している。
その一環として、先進国である米国に鉄源一貫製鉄所を持つ意義が大きいことから今回USスチールの買収を決めたという。USスチールは、粗鋼生産量米国有数の高炉/電炉一貫鉄鋼メーカーで、自動車や家電、建材用途などの薄板、エネルギー分野用途の鋼管などを、米国と欧州(スロバキア)で製造、販売している。粗鋼生産能力は約2000万トンで、高炉一貫製鉄所に加え、高級鋼の生産が可能な電炉ミニミル、鉄鉱石を自給できる鉄鉱石鉱山などの有用資産を保有している。
買収は、NSNAが今回の買収のために設立した子会社である2023 Merger SubsidiaryとUSスチールとを合併する方法(逆三角合併)で実行する。買収に関係する費用の総額は141億2600万米ドル(約2兆100億円)になる見込みだという。
今回の買収により日本製鉄グループのグローバル粗鋼年間生産能力は約8600万トンまで拡大する。さらに日本製鉄とUSスチールが持つ、電磁鋼板や自動車鋼板などの高級鋼製品に関する技術力を相互に生かした製品やサービスを提供する。
また、2050年カーボンニュートラル達成に向けて、日本製鉄が持つ「高炉水素還元」「水素による還元鉄製造」「大型電炉での高級鋼製造」の3つの技術と、USスチールが運営する先端的な電炉ミニミルBig River Steelなどのノウハウを組み合わせていくとしている。
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