レゾナックは、半導体パッケージの大型化に伴い生じる課題の1つである「反り」を抑制した、次世代半導体パッケージ向け低熱膨張銅張積層板を開発した。
レゾナックは2025年2月12日、半導体パッケージの大型化に伴い生じる課題の1つである「反り」を抑制した、次世代半導体パッケージ向け低熱膨張銅張積層板を開発したと発表した。同製品の温度サイクル試験における寿命は従来比の4倍を実現し、100x100mmを超える半導体パッケージにも対応している。今後は2026年の量産を目指して取り組みを進めていく。
なお、同製品は、計算科学技術の1つである「マルチスケール解析」の応用により、銅張積層板を形成する各材料個別の設計指針を明確にすることで開発につなげた。同社は、この技術を汎用的に利用できる物性可視化システムとして構築し、社内へ導入した。
マルチスケール解析とは、スケールが異なる2つの構造物における双方の物性、あるいは挙動を連成させる技術だ。複数の異種材料から成る複合材料の材料特性を均質化することで、材料全体の挙動を容易に把握できるようにする。
近年、次世代半導体のパッケージ基板は大型化の傾向にある。大型化に伴い、基板の反りがパッケージの信頼性へ与える悪影響はより大きくなる。基板の反りを抑制するためには、基板のコア材料である銅張積層板の熱膨張係数を小さくすることが有効とされている。
しかし、この場合は温度サイクル試験の冷却時に、基板を構成する他の材料との熱膨張差により、クラックが発生しやすくなる。クラックを低減する手法の1つとして、銅張積層板に設計指針を設ける方法がある。ただ、銅張積層板は樹脂や無機材(ガラスクロス)など複数の材料から構成されており、各材料個別の設計指針にまで落とし込むことはできていなかった。
そこで、レゾナックの計算情報科学研究センターでは、銅張積層板の樹脂とガラスクロスから成るコア層に、スケールの異なる構造体同士の物性や挙動の相互作用を考慮できる「マルチスケール有限要素法(FEM)解析」を適用した。マルチスケールFEM解析とは、物体や構造物を小さな要素に分割し、それらの要素の性質を数値化して計算を行うことで、全体の挙動を解析する有限要素法を、マルチスケール解析に適用した技術だ。
これにより、クラックが発生しやすい、コア層の樹脂にかかる局所的な応力を詳細に解析し、樹脂の特定の物性を制御することで、発生する応力を低減した銅張積層板を同社は開発した。
同社は、この技術を活用して汎用的な物性可視化システムを構築し、社内展開も開始した。このシステムでは、ユーザーが材料の物性を入力すると、反りなどの目的特性がどのように変化するのか、その傾向を可視化できる。銅張積層板に限らず、封止材やフィルム材料など複数材料から成る幅広い製品に対応している。現在は同社が強みとする半導体後工程製品を中心に同技術の活用を開始している。
また、次世代半導体の開発競争が激化する中で高性能な半導体材料を迅速に提案することが求められている中、同社は、計算情報科学研究センターのリソースの7割を半導体材料開発に投下し、成果を上げているという。
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