A1Aは2021年12月9日、鉄鋼市場の重要トレンドを解説するセミナーを開催した。セミナーでは鉄鋼業界の業界紙である鉄鋼新聞社 取締役 編集局鉄鋼部長の高田潤氏と、同社 編集局鉄鋼部 記者の黒澤広之氏が登壇し、2021年の業界を振り返るとともに、今後重要になる脱炭素化への対応などについて解説した。
A1Aは2021年12月9日、鉄鋼市場の重要トレンドを解説するセミナーを開催した。セミナーでは鉄鋼業界の業界紙である鉄鋼新聞社 取締役 編集局鉄鋼部長の高田潤氏と、同社 編集局鉄鋼部 記者の黒澤広之氏が登壇し、2021年の業界を振り返るとともに、今後重要になる脱炭素化への対応などについて解説した。
高田氏によると、現在、主要な鋼材価格は上昇基調にある。例を挙げると、2021年11月時点で冷延薄板は2020年1月末と比べて約1.7倍に、厚板は約1.5倍、H形鋼は約1.4倍の水準まで価格が上昇している。
価格上昇の要因として高田氏は「コロナ禍からの需要回復」「鉄鋼原料価格の上昇」「鉄鋼メーカーの供給制約」の3点を指摘する。
コロナ禍からの需要回復については、例として自動車業界と造船業界向けの鋼材供給の状況を挙げた。自動車業界は半導体不足で生産に影響が出ており、同業界への若干の供給停滞が見られるが、「2022年の1〜3月期、あるいは4〜6月期に回復する」(高田氏)と予測されているという。また、コロナ禍で最も影響を受けた造船向けの鋼材も2021年秋ごろから需要が回復傾向にあるという。
鉄鋼原料価格の上昇については、2021年上期は鉄鉱石の、下期は原料炭の価格高騰が見られた点を挙げる。鉄鉱石は2021年7月まで、中国による大量輸入によって価格が上昇基調にあった。しかし、同月以降は同国が国内鉄鋼業に対して減産指令を出し、さらに輸入抑制を行ったため軟調に推移している。これらの動きについて高田氏は「半導体不足に起因する内需低迷や、電力不足による電力使用制限などが影響している」と説明した。
原料炭については、中国がオーストラリアからの輸入を「明示的ではないが実質的に通関させない」(高田氏)状態が2020年秋ごろから続いていた。しかし、2021年秋ごろからは欧州とインドなどが豪州産の輸入を拡大したことで価格が急上昇している。高田氏は「2021年7月以降、鉄鉱石と原料炭の価格トレンドは異なる動きを見せている。通常は大体似通った動きになるはずだが、かつてない現象だ」と説明した。
鉄鋼メーカーの供給制約については、上工程ラインの休止や切り替えが相次ぎ、フル操業状態でも実質生産能力が年間1億トンを下回る見通しで、鋼材価格の押し上げ要因となっているという。中国企業の台頭や2018年以降の内需縮小など、鉄鋼業を取り巻く市場環境が変化したことが背景にある。
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