腸内環境を再現した細胞培養装置のテスト販売を開始:医療機器ニュース
島津製作所は、ヒトの腸内環境を再現した細胞培養装置「腸内細菌共培養デバイス」のテスト販売を開始した。1つの培養容器内で、酸素が必要な腸管上皮細胞と酸素のない環境を好む腸内細菌の共培養が可能だ。
島津製作所は2023年6月22日、ヒトの腸内環境を再現した細胞培養装置「腸内細菌共培養デバイス」のテスト販売を開始した。1つの培養容器内で、有酸素環境と無酸素環境を再現し、酸素が必要な腸管上皮細胞と、酸素のない環境を好む腸内細菌の共培養が可能だ。京都大学との共同研究による基礎研究を基に、製品化された。
腸内細菌が生産するさまざまな物質は、腸管上皮細胞が吸収することで全身に作用する。そのため、培養により腸内環境の状態と全身の相互作用を確認するには、好気環境と嫌気環境の再現が必要となる。
腸内細菌共培養デバイスは、実際の腸管に近い環境で、腸管上皮細胞と腸内細菌の相互作用の評価が可能だ。培養容器の腸管腔側と腸組織側で使用する培地は変え、腸管腔側には腸内細菌と細菌用培地、腸組織側には酸素を含んだ細胞用培地を設置した。
腸管上皮細胞をセットした培養容器を嫌気チャンバー内で培養することで、腸管腔側は無酸素状態を維持する一方で、腸組織側は細胞用培地から供給される酸素により有酸素環境が作られる。
細菌用培地を継続して供給することで、腸管細胞の死滅の原因となる過剰な腸内細菌を押し流し、3日以上の長期間実験が可能となった。また、培養中に細胞が死滅していないかなどを確認するために、腸管上皮細胞のTEER(経上皮電気抵抗値)計測の機能が搭載されている。
細胞培養実験後は、腸内細菌の代謝産物や菌数の変化、腸管上皮細胞を介して体内に取り込まれる物質などの情報が得られる。また、LC-MS(高速液体クロマトグラフ質量分析計)やガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS)による代謝産物の分析も可能だ。
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