e-Axleは自動車部品メーカー選別の時代が始まった:和田憲一郎の電動化新時代!(47)(3/3 ページ)
2022年の電気自動車やプラグインハイブリッド車の新車販売台数が全世界で約1050万台となり、新車販売に占める割合も約13%となったようだ。そのような中、e-Axleに注目が集まっている。
今後の展開は
今後の展開は3つの方向性があると思われる。1つは、上記4つの要件に対応できる力を備え、グローバル展開できるe-Axleを開発し、量産していく力のある自動車部品メーカーの存在だ。しかし、これを実行できる自動車部品メーカーは次第に絞られるのではないだろうか。日本でも、日系自動車部品メーカーに力がなければ、外資系自動車部品メーカーが参入してくることは十分に予想される。
2つ目が、従来のエンジンと同様に自動車メーカー主体で開発を行うやり方である。衝突安全性などは自動車メーカーが担当し、e-Axle自動車部品メーカーはあくまで仕様書に沿った部品として供給し、自動車メーカーもしくは傘下の自動車部品メーカーで組み立てる。その場合は、e-Axleとしてのメリットは中途半端となるが、現実的な解となるだろう。
3つ目は、中国などで良く売れている廉価EVなどでの対応である。価格重視のEVの場合、きちんとしたe-Axle化にこだわる必要はなく、それほど技術的に難しい対応を要求されない。今後、上汽通用五菱汽車「宏光MINI EV」のように北米や欧州などへの輸出を考えない場合、割り切った開発ができるのではないだろうか。いずれにしても、e-Axleはメーカー乱立の時代から、選別もしくは優勝劣敗の時代に入ったといえる。
なお、どうしても自動車の厳しい衝突安全性への対応や、冷暖房システムとの連携、OTA対応などが難しい自動車部品メーカーもあるかもしれない。このような場合、自動車だけで考えるのではなく、欧州を中心に広がり始めている建設機械や農業機械の電動化に向けたe-Axle展開を考えてはいかがだろうか。
電動建設機械や電動農業機械のe-Axle構造は極めて自動車に近い。さらに、自動車のような衝突安全要件は不要となるため、同じe-Axleと言っても要求仕様が異なり、新たな用途として市場拡大していくように思われる。このように、e-Axleはまだまだビジネスチャンスがあるように思える。
筆者紹介
和田憲一郎(わだ けんいちろう)
三菱自動車に入社後、2005年に新世代電気自動車の開発担当者に任命され「i-MiEV」の開発に着手。開発プロジェクトが正式発足と同時に、MiEV商品開発プロジェクトのプロジェクトマネージャーに就任。2010年から本社にてEV充電インフラビジネスをけん引。2013年3月に同社を退社して、同年4月に車両の電動化に特化したエレクトリフィケーション コンサルティングを設立。2015年6月には、株式会社日本電動化研究所への法人化を果たしている。
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