カッコいいだけじゃない、バックパック型VRマシンの裏側にあったHPのビジネス戦略:VRニュース(2/2 ページ)
HPは2017年9〜10月にかけてVR関連製品を相次いで発売した。VR製品のビジネス戦略について発表し、引き続きゲーミング向けにも注力するとともに、商用向けはさらに重要視して取り組んでいく方針を示した。背負えるワークステーションの裏にも、「カッコいい」だけではない戦略があった。
洗練されたデザインと高性能を兼ね備えるVR製品群
VRコンテンツを製作するプロフェッショナルには高性能なワークステーションが必要である。まずはプロフェッショナルが満足するような製品を投入する。さらにプロフェッショナルが作ったコンテンツを誰もが利用できるような仕組みを作る。コンテンツの利用者側は、装置の価格にもデータの質にも厳しい。また、快適にVRコンテンツに没入するには、必要な要件を満たした装置を用意しなければならない。多くの利用者にとって手の届きやすい価格で、かつ簡単に使える製品の投入を目指す。
さらにプロフェッショナル向け、個人向け、いずれにしても「デザインの格好良さ」や「使い勝手の良さ」は重要視しているポイントだと九嶋氏は言う。HP Z VR Backpackは洗練されたデザインと高性能を兼ね備えた製品である「プレミアム」でもある。
ゲーミングと商用とでは、VR活用の目的も大きく異なる。ゲーミングはとにかく「素晴らしい体験」が目的であり、商用ではワークフローやオペレーションの変革、生産性向上、コスト削減といったことが目的となる。上記の新製品についても、「VR利用時に、設計環境が背負えること」で、ユーザーの目的に着目した製品として成立させている。同社ではそうした目的の違いに応じた製品を開発し、消費側からコンテンツ制作側まで、ハイエンドからローエンドまで、VR関連製品を多様化していく方針である。
商用VRについても当然、コンテンツ制作側と消費側と両側面のニーズがある。HP Z VR Backpackについていえば、そのどちらも考慮された製品だ。ワークステーションとして使う場合はドッキングステーションにセットして、PC画面の前で使う。VR閲覧したい場合はマシンをドッキングステーションから外して背負い、バッテリーもホットスワップさせて使える。他社のバックパック型ワークステーションはゲーミングがターゲットになっていることからとにかくデザインやパフォーマンスが重視されているが、設計用途としての兼用やバッテリーの持続性を考慮している面はプロフェッショナル向けをうたう故のHP Z VR Backpackの特長である。
「現在のVRの市場の8割近くがゲーミング分野だといわれる。HPにおいても引き続き、大事な要素として継続的にゲーミング分野に対応していく。商用(産業)VRについては、それ以上に重要だと認識している。2018年までに大企業の30%がVRを展開するだろうとアナリストも分析している。今、チャレンジングな状況であって、当社としてもそのための技術を用意しておかなければならない」(HP パーソナルシステムズ ワークステーション&シンクライアントビジネス担当 バイスプレジデント 兼 ゼネラルマネージャー チャビィ・ガルシア氏)
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