欧州の自動車CO2排出量規制に“抜け道”あり――インフィニオンが示唆:オートモーティブワールド2014
車載半導体大手のInfineon Technologiesでエレクトリックドライブトレイン担当シニアディレクターを務めるマーク・ミュンツァー氏は、「欧州の自動車二酸化炭素(CO2)排出量規制はさらに厳しくなっていくが“抜け道”と言っていい対応策がある。それはプラグインハイブリッド車の開発だ」という見解を述べた。
インフィニオン テクノロジーズ ジャパンは2014年1月16日、自動車技術の展示会「オートモーティブワールド2014」(同年1月15〜17日、東京ビッグサイト)への出展に合わせて、車載半導体事業についての記者会見を開いた。会見に登壇した、ドイツ本社のInfineon Technologiesでエレクトリックドライブトレイン担当シニアディレクターを務めるMark Muenzer(マーク・ミュンツァー)氏は、「さらに厳しくなる欧州の自動車二酸化炭素(CO2)排出量規制に対応するため、プラグインハイブリッド車の開発が重視されるようになる」という見解を述べた。
欧州連合(EU)は、欧州市場で販売される新型乗用車が排出するCO2の量を規制することによって、燃費向上と排気ガスのクリーン化を推し進めている。2015年までの目標値は、タイヤなどによる燃費向上効果を含めて120g/km(車両単体では130g/km)。2021年の目標値はこれよりもさらに厳しく95g/kmとなっている。
2012年に欧州市場で販売された新型乗用車のCO2排出量は140g/km前後であった。つまり、2021年までの9年間で50g/km近いCO2排出量削減を実現しなければならないことになる。
ミュンツァー氏は、「95g/kmというCO2排出量を達成するにはハイブリッド化や電気自動車の導入といった手法が必要になるのは確実だ。だが、目標達成に向けて、“抜け道”と言っていい方法も用意されている。それがプラグインハイブリッド車の開発だ」と説明する。
欧州の燃費測定法であるECE R101では、プラグインハイブリッド車の燃費を測定する際には、計測したCO2排出量をさらにFuel consumption reduction factor(燃料消費量削減係数)で割ることになっている。この係数は、25km+燃費測定車両のEV走行距離/25kmという簡単な計算式から導き出される。
既に欧州市場で販売されている車両で比較すると、この“抜け道”の効果の大きさがよく分かる。ガソリンエンジンのみを搭載するDaimlerの「Mercedes Benz S500」の場合、CO2排出量は210g/kmである。一方、プラグインハイブリッド車である「Mercedes Benz S500 Plug-in Hybrid」は、ガソリンエンジンのダウンサインジングによるCO2排出量そのものの低減に加えて、同車両の30kmというEV走行距離から計算できる燃料消費量削減係数で割ることにより、CO2排出量は69g/kmとなる。
「Mercedes Benz S500」と「Mercedes Benz S500 Plug-in Hybrid」のCO2排出量の比較。Mercedes Benz S500 Plug-in Hybridは、30kmというEV走行距離から計算できる燃料消費量削減係数の効果により、CO2排出量は極めて低くなる(クリックで拡大) 出典:インフィニオン テクノロジーズ ジャパン
ちなみに、ディーゼルハイブリッド車である「Mercedes Benz S300 BlueTec Hybrid」でさえもCO2排出量は115g/kmにとどまる。これらの事実から、「欧州の自動車CO2排出量規制によって、欧州市場におけるプラグインハイブリッド車の開発が促進される」(ミュンツァー氏)というわけだ。
関連記事
- 直噴エンジンは汚い!? 排気ガスに含まれるPM2.5の個数はポート噴射の10倍以上
国立環境研究所は、燃費が良好なことから新車への搭載が増えている直噴ガソリンエンジンが、従来のポート噴射ガソリンエンジンと比べて、排気ガスに含まれるPM2.5の個数が10倍以上に達するという実験結果を発表した。 - カタログ燃費と実燃費の差をなくせ! 欧州が燃費計測の世界標準策定に動く
自動車のカタログ燃費よりも、その自動車を実際に運転して走行する際の実燃費が下回っていることは周知の事実だ。この問題を解決するため、日本でも2012年4月からJC08モード燃費を導入し、より実燃費に近いカタログ燃費が使用されるようになった。しかし欧州は、燃費計測方法の世界標準の策定など、さらに先進的な取り組みを進めようとしている。 - インフィニオン、「車載」「パワー」「セキュリティ」で市場上回る成長を目指す
インフィニオン テクノロジーズは2013年11月21日、都内で2013年度(2013年9月期)の業績に関する記者説明会を開催し、注力する「パワー半導体」「車載半導体」「セキュリティ」という3事業領域でシステム提案を強化し、2014年度(2014年9月期)以降も市場平均を上回る成長を持続させていく方針を示した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.