息を吹いて“代謝の状態”を計測、キリンのヘルスケア端末「Lumen」とはイノベーションのレシピ

キリンは、呼気から代謝状態を可視化するデバイス「Lumen」の日本展開を発表した。同社のCVC活動から本格的な事業化に至った初の事例であり、ヘルスサイエンス事業の新たな成長エンジンとする。同事業では2035年に売上収益5000億円を目指す。

» 2026年09月16日 07時45分 公開
[安藤照乃MONOist]

 キリンホールディングスは2026年9月15日、東京都中野区のキリングループ本社で記者発表会を開き、呼気から個人の代謝状態を測定して可視化するウェルネステックデバイス「Lumen(ルーメン)」を日本国内で展開すると発表した。同月30日から応援購入サービス「Makuake」にて先行販売を開始する。同社が長年展開してきた食品や飲料による「飲む、食べる」というアプローチに加え、自身の身体の反応を「測る、知る」という新領域へ踏み出すことで、利用者の健康行動の定着を支援するパーソナルヘルスケアサービスとして展開する。

ウェルネステックデバイス「Lumen(ルーメン)」 ウェルネステックデバイス「Lumen(ルーメン)」出所:キリンホールディングス
測定の様子 測定の様子

約30秒の呼気測定で「糖質」と「脂質」の燃焼状態を可視化

 Lumenは、2018年に米国のクラウドファンディングを通じて製品を発表し、現在グローバルに事業を展開しているウェルネステック企業のMeta Flow社が開発した呼気測定デバイスだ。これまでに世界で累計30万人以上が利用し、1億回以上の呼吸データが蓄積されている。デバイスは高さ102×幅42×奥行き32mmで重さ約75gの手のひらサイズで、CO2センサーの他、流速、圧力、温度センサーが組み込まれている。

デバイスは高さ102×幅42×奥行き32mmで重さ約75g デバイスは高さ102×幅42×奥行き32mmで重さ約75g[クリックで拡大]

 人間の身体は、日々の活動を維持するエネルギー源として主に「糖質」と「脂質」を利用している。キリンホールディングス ヘルスサイエンス経営企画部 新事業開拓室 技術士の金子裕司氏によると、「体内では糖質が即効性のあるエネルギーとして、脂質が持続的なエネルギーとして使われる特性がある。どちらのエネルギーが良いというわけではなく、食事や運動などの状況に応じてエネルギー源を柔軟に切り替えられるハイブリッド車のような、代謝の柔軟性を保つことが健康維持において重要になる」という。

糖質と脂質の役割 糖質と脂質の役割[クリックで拡大]出所:キリンホールディングス

 使用時には、専用アプリの案内に沿って約30秒間の呼気測定を行う。デバイスから息を吸い込み、約10秒間息を止めた後、ゆっくりと吐き出すことで、身体が現在どちらのエネルギーを主に利用しているかを独自アルゴリズムで推定する。測定された代謝状態は、1〜5の5段階の指標「Lumen Level」として専用アプリ上に表示され、糖質を主に消費していればレベル4〜5、脂質を消費していればレベル1〜2といった具合で可視化される仕組みだ。

専用アプリに代謝状態の測定結果が表示される 専用アプリに代謝状態の測定結果が表示される[クリックで拡大]出所:キリンホールディングス
測定結果と併せて、食事や運動などの提案がアプリ上で表示される 測定結果と併せて、食事や運動などの提案がアプリ上で表示される[クリックで拡大]出所:キリンホールディングス

 専用アプリでは数値を提示するだけでなく、測定された代謝状態の傾向に合わせて食事のバランスや運動のタイミングなどを提案する。金子氏は「健康のために何をすべきか分かっていても、自分に合っているかどうかの手応えを感じにくいため続かないことが多い。Lumenによって行動に対する身体の反応を可視化することで、『なんとなく』の健康行動から『納得して続ける』健康行動へと変えていける」と提供価値を説明した。

 なお、同製品は医療機器ではなく、疾病の診断や治療、予防を目的としたものではない。

 同日の発表会には、モデルの福田萌子氏がゲストとして登壇し、Lumenを用いた測定を実演した。事前に少量の食事を摂った状態で測定を行った結果、スコアは糖質と脂質をバランスよく燃焼していることを示すレベル3となった。

ヘルスサイエンス領域で2035年に収益000億円へ、CVC発の第1号案件

 今回のLumenの日本展開は、キリンのコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)活動を通じたスタートアップ投資から、本格的な事業化に至った初の事例となる。キリンは2019年にヘルスサイエンス事業を開始し、2025年に同事業での黒字化を達成した。さらに2035年の長期ビジョンとして同領域で売上収益5000億円を目指しており、新たな成長エンジンとして2026年4月に新事業開拓室を設置した。

キリンのヘルスサイエンス事業 キリンのヘルスサイエンス事業[クリックで拡大]出所:キリンホールディングス

 同社はCVC「KIRIN VENTURES」を通じて年間約1000件のスタートアップを評価し、これまでに約50社へ出資してきた。Meta Flowへも2023年に出資しており、その後の協業や日本市場での調査を経て、国内の独占販売権を取得した。キリンホールディングス ヘルスサイエンス経営企画部 新事業開拓室 室長の津川翔氏は「2035年の売上収益目標のうち、複数の新事業で合計200億〜300億円規模を目指す。既存事業の成長に加えてM&Aや新事業開発によって新市場へ進出し、成長機会を拡大していく」と戦略を説明する。

Lumenの事業化までの道筋 Lumenの事業化までの道筋[クリックで拡大]出所:キリンホールディングス

 Makuakeでの先行販売期間は2026年9月30日から同年11月13日までで、価格は本体と1年間のアプリ利用料を含めて3万4800円〜4万9800円(いずれも税込み)で提供する。先行販売を通じて顧客の反応や行動データの変化を検証し、発売から1年間で5000台の販売を目標としている。一般販売については先行販売の結果を踏まえて早ければ2027年内の開始を視野に入れており、予定価格は本体が4万5800円、アプリ利用料が月額1180円(いずれも税込み)などを想定している。

(左から)キリンホールディングス ヘルスサイエンス経営企画部 新事業開拓室 技術士の金子裕司氏、モデルの福田萌子氏、キリンホールディングス ヘルスサイエンス経営企画部 新事業開拓室 室長の津川翔氏 (左から)キリンホールディングス ヘルスサイエンス経営企画部 新事業開拓室 技術士の金子裕司氏、モデルの福田萌子氏、キリンホールディングス ヘルスサイエンス経営企画部 新事業開拓室 室長の津川翔氏

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