キリンホールディングス(キリン)が、「プラズマ乳酸菌」を使用した食品や飲料を展開するブランド「iMUSE」を中核とするヘルスサイエンス事業の戦略について説明。同事業の売上高は2018年に55億円を達成しており、今後は2021年に約2.7倍の150億円、2027年に4倍超となる230億円を目指す。
キリンホールディングス(以下、キリン)は2019年4月24日、東京都内で会見を開き、「プラズマ乳酸菌」を使用した食品や飲料を展開するブランド「iMUSE(イミューズ)」を中核とするヘルスサイエンス事業の戦略について説明した。同事業の売上高は2018年に55億円を達成しており、今後は2021年に約2.7倍の150億円、2027年に4倍超となる230億円を目指す。また、事業拡大に向けて、グループ会社である小岩井乳業の東京工場(埼玉県狭山市)内に乳酸菌を生産する工場を新設したことも明らかにした。
キリンのヘルスサイエンス事業は、同社グループ内で酒類や飲料を手掛ける「食領域」と、医薬事業を扱う「医領域」の中間に当たる「医と食をつなぐ事業」という位置付けになる。同社 ヘルスサイエンス事業部 部長の佐野環氏は「これまでの事業創造部から4月1日付で名称変更した。今後もキリングループ内の技術を生かしていくため、グループ内を横断した組織体制で活動することに変わりはない。グループ内にさまざまな独自素材や技術がある中で、ヘルスサイエンス事業部として注力するのは、免疫の基盤研究の成果を飲料や医療機関向けに事業化していくことだ」と語る。
免疫は、人が本来から持っている健康状態を維持する仕組みである。キリングループは、発酵技術を基に30年以上免疫学の研究を続けており、ヘルスサイエンス事業はその免疫研究の成果を、食品や飲料といった「食」の特徴を生かしたアプローチで事業展開しようとしている。「食は、安全で長期摂取が可能であり、薬とは異なり複数成分で作用する。これらの特徴によって、健康寿命の延伸という社会課題の解決の一助となりたい」(佐野氏)。
ヘルスサイエンス事業部では2017年秋から、プラズマ乳酸菌を使ったiMUSEブランドの製品展開を始めている。飲料、ヨーグルト、サプリメントの他、調剤薬局など医療機関向けの商品も用意している。また、「KW乳酸菌」を配合したサプリメント「Noale(ノアレ)」の事業をヤクルトヘルスフーズから2019年3月に譲り受け同年4月から販売している。佐野氏は「プラズマ乳酸菌はウイルス感染への守り、KW乳酸菌はアレルギー症状の緩和と、それぞれ特徴がある」と説明する。また、自社での展開の他、ヤフーとの共同研究、カンロとのコラボ商品開発なども積極的に進めている。現時点では国内市場にとどまっているが海外展開も見据える。健康管理の意識が高い消費者が多い北米の他、2019年6月に研究拠点を開設する東南アジアでの事業展開を検討している。
これらの事業拡大に向けて、小岩井乳業の東京工場内にプラズマ乳酸菌とKW乳酸菌を生産する工場「iMUSE ヘルスサイエンスファクトリー」を新設し、2019年4月25日から稼働を始めた。工場の敷地面積は895m2、投資金額は約20億円で、初年度の年間生産能力は約10トン。これまで、ヘルスサイエンス事業部で扱う製品向けの乳酸菌の生産は外部に委託していたが、今後は自社生産となる。「新工場の生産能力があれば、2021年の売り上げ目標を十分にカバーできる」(佐野氏)としている。
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