そこで、パナソニック インダストリー山口拠点では、見える化したデータをベースに人のオペレーションの改善アクションを進めていく一方で、これらの改善の知見をデータとして構造化できるようにするための取り組みを進めた。「現場でデータを見て、状況判断し、対策内容を決め、決めたアクションを実行するOODA(観察、状況判断、意思決定、実行)ループを回すことが重要だ。これをさらに構造化するために、フレームワークの構築を進めた」と高橋氏は説明する。
具体的には、アクションなどの標準化を進め、参照データやそれに対する行動などを、日々の会議の内容などを決められた形で記録していくことで、それをAIが読み取れるような構造的なデータとして記録できるような仕組みを作った。これを「暗黙知の構造化フレームワーク」として確立したことが大きなポイントだ。
「詳細は説明できないが、フレームワークを構築できたことで、日々の活動による知見や人の動きが、そのままAIで学習できるようなデータとして記録できるようにした。このフレームワークは他の部門や企業でも通用するだろうと考えている」と高橋氏は語る。
設備の動き、人の動き、そして生産の知見がデータ化されたことで、AI活用が大きく現実のものに近づいた。製造現場でAI活用を進めようとすると、AIに学習させるためのデータが整っていないために、精度が出せずに活用しきれないというケースがよく生まれている。高橋氏は「AIを製造現場で活用するには、現場での人の知見をどうデータ化し、AIに学習させるかが重要になる。山口拠点では『暗黙知の構造化フレームワーク』により、自然に新しい知見がしっかりと記録されるようになっている。それが重要だ」と説明する。
AI活用では、まず作業員に配布したウェアラブル端末に「どの設備の対応を優先するか」を通知する「優先度通知システム」の活用を開始。作業の優先度をAIが判断して通知をするため、設備復旧時間を最大30%削減できた他、設備停止時間の最小化にも貢献しているという。同様にRFIDを活用した「移動履歴管理システム」により仕掛品のロケーションを把握できるようになり、材料待ち稼働ロスを最大50%以上削減できたという。
さらに、AI活用を進化させ、複数のAIエージェントが実績データなどを確認してAIエージェント間で調整し、自動で工程内アクションを出力するAIエージェント活用を推進しているという。
具体的には、カシメ工程分析サブエージェント、巻き取り工程分析サブエージェントなど、各工程のサブエージェントを用意している他、品質管理や稼働管理など、管理視点でのサブエージェントを用意し、フロントAIエージェントがこれらのエージェントと調整しながら、最適な作業をレコメンドできるようにする仕組みを構築している。
高橋氏は「フロントAIエージェントと自然言語で会話するだけで、問い合わせ内容に対し、最適な作業内容や修正案をレコメンドする。実際に各部門や工程の視点をAIエージェント化して、その観点で指示をするような仕組みを構築している。従来は課長レベルでしか判断できなかったようなことが、数分でレコメンドできるようになり、QCD(品質、コスト、納期)の全てで大きな価値を生んでいる」と説明する。工程や部門ごとのAIエージェント(サブエージェント)は現在15以上を用意しているという。
今後は、さらにAIエージェントの活用を広げるため、音声での対話で作業が行えるようにする他、現場レイヤーだけでなく、サプライチェーンに関連する仕組みと連携することを想定しているという。
高橋氏は「サプライチェーンの状況が生産に影響することも多くなってきており、効率をさらに高めるためには、SCMとの連携なども重要になる。SCMまで含めたエージェント化も検討していく」と展望について語っている。
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