社員の“挑戦を阻む壁”を壊せ パナソニックグループが仕掛ける「UNLOCK」改革モノづくり最前線レポート(1/2 ページ)

パナソニックHD グループCEOの楠見雄規氏は就任以来、継続して「組織カルチャーの変革」を訴えてきた。では、パナソニックグループでは現在、具体的にどのような変革に取り組んでいるのだろうか。組織カルチャー変革を担当するパナソニックHD グループCHROの木下達夫氏が、一部報道陣の合同取材に答えた。

» 2026年09月03日 08時00分 公開
[三島一孝MONOist]

 パナソニック ホールディングス(パナソニックHD)は2026年3月期(2025年度)に1万2000人の人員削減を伴う構造改革を行い反転への道筋を付けた。2027年3月期(2026年度)は第1四半期で過去最高の営業利益を達成するなど順調な滑り出しを見せているが、改革の成果を根付かせて花開かせるために重視されているのが「組織カルチャーの変革」だ。

 パナソニックHD グループCEOの楠見雄規氏は就任以来、継続して「組織カルチャーの変革」を訴えてきた。では、パナソニックグループでは現在、具体的にどのような変革に取り組んでいるのだろうか。組織カルチャー変革を担当するパナソニックHD グループCHROの木下達夫氏が、一部報道陣の合同取材に答えた。

「挑戦」に関する数値が低迷

photo パナソニックHD グループCHROの木下達夫氏 出所:パナソニックHD

 木下氏は、P&GやGE、メルカリなどの人事関連部門を歴任し、2024年7月にパナソニックHDに入社。パナソニックグループの組織変革に一貫して取り組んできた。パナソニックHDに入社した理由について木下氏は「悔しさと本気で変わる覚悟があり、経営基本方針というゆるぎない軸が定まっていたということが大きかった。また、パナソニックグループが変われば、日本全体に影響を与えることができると考えた」と述べている。

 木下氏は入社後、組織カルチャーの問題を調査する中で、2つの課題に気付いたという。「エンゲージメントサーベイなどを見ると、思ったほど組織のコンディションは悪くないことが分かった。一方で『会社や上司により挑戦意欲が高まる』や『挑戦への阻害要因がない』という『挑戦』に関する2つの項目の数値が低いことに気付いた。そこで、この課題解決にフォーカスすることを決めた」(木下氏)。

photo 2024年度までの従業員サーベイの結果と「挑戦」に関する2つの課題[クリックで拡大] 出所:パナソニックHD

 そこで、これらの壁を打破するために「UNLOCK」をキーワードとして掲げた。UNLOCKとは「一人ひとりの能力発揮を阻害する要因を取り除き、誰もが自ら挑戦したくなる環境をつくること」と定義し、組織全体が心理学における「フロー」の状態に入ることを目指す。そして、この状態を実現する指標として「UNLOCK指標」を定めた。

 UNLOCK指標は、先述した「会社や上司により挑戦意欲が高まる」と「挑戦への阻害要因がない」という2つの設問に肯定的な回答をした社員の割合と位置付けており、2025年度に43%だった割合を、2028年度に60%、2031年度に70%まで引き上げる。また、この2設問だけでなく、関連する評価や採用、仕事デザインや配置などの項目も併せてチェックする。木下氏は「国内は30%程度で海外よりも低い数値となっている。リスクを取った社員が報われる環境を作る」と説明する。

photo UNLOCK指標とサブ指標[クリックで拡大] 出所:パナソニックHD

想定以上にUNLOCK指標の改善が進む

 ただ、社員それぞれがバラバラに挑戦を進めても、企業全体の力にはならない。当時は構造改革を進めていたこともあり、特に事業戦略の一環として組織カルチャーを意図的にデザインすることが重要となっていた。

 「組織改革をする時期だからこそカルチャーが重要だ。事業成果を最終的に出すためには、社員の行動やマインドセットが重要な要素となる。それを実現するために『組織構造と配置』『評価と報酬』『仕事デザイン』『意思決定』『採用/トレーニング/リーダーの選抜』『情報共有/学びのプロセス』という6つの原則で組織デザインをしていく。事業戦略を実行するためにどういう行動をするかを考え、具体的な打ち手に落とし込んでいった」と木下氏は語る。

photo 事業戦略を支える組織カルチャーの位置付け[クリックで拡大] 出所:パナソニックHD

 これらを踏まえ2024〜2025年度にかけて、経営責任者向けの教育プログラムを実施し、現場主導のカルチャー変革を推進してきた。「組織デザインワークショップ」や「レジリエンスプログラム」などのプログラムにはのべ732人が参加し、グループ横断のコミュニティー形成により各部門の変革を促した。

 こうした取り組みを重ねることで、2025年度のUNLOCK指標は、2024年度に対し全51事業部門のうち、24事業部門で良化し、5部門が維持という結果となった。木下氏は「2024〜2025年度にかけては構造改革をまさに行っていたタイミングで、もっと悪化すると予想していた。3分の2は悪化すると想定しており、一度しゃがんで再び立ち上がるというイメージをしていたが、予想以上に前向きな変化が生まれた。まさに課題事業として構造改革を進めている事業部門でも良化しているところもあり、うれしい驚きとなったところもある」と説明する。

photo 2025年度のUNLOCK指標の変化[クリックで拡大] 出所:パナソニックHD
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