転記が消え、案件別に原価が積み上がると、決算を待たずに判断できることが増えます。例えば、以下のようなことが可能になります。
現場でこの仕組みが回り始めると、「月次の全体像しか見えない」状態から「案件一つ一つの粗利が同じ土俵で見える」状態へ転換します。
最後に、順序の話をします。今回紹介した3原則を満たす仕組みを用意しても、初日から精緻な原価が出るわけではありません。最初の1カ月は、数字の正しさより「全案件が同じ器に載っている」ことだけを目標にすべきです。単価が仮でも、経費の配賦が粗くても構いません。器が1つになれば、数字のおかしさは使いながら必ず見つかり、直すことができます。
逆に、最初から精度を求めて入力ルールを分厚くすると、現場は初月で脱落してしまいます。形骸化した「見える化」の多くは機能ではなく、この立ち上げの順序でつまずいています。
また、移行の起点は「進行中の案件」からで十分です。過去案件をさかのぼって入力し直す作業は、労力の割に得るものが少なく、現場の心を最初に折ってしまう典型です。現在動いている案件から器に載せ、過去は必要になったものだけ後から足す。完璧な過去より、続く現在が大事です。
案件別原価管理と聞くと、大企業の精緻な管理会計を思い浮かべるかもしれません。しかし中小の受託加工業にとって必要なのは、精緻さよりも先に「この案件はもうかっているか」を、案件が終わる前に「勘でなく数字」で把握できることです。
そして、そのために必要なのは、高機能なシステムでも難しい理論でもありません。むしろ機能を足すほど遠ざかります。解はたった1つ、転記をなくすこと。これだけです。原価管理に困っている人は、まずここから始めてみましょう。
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