水電解によるグリーン水素製造の研究開発において、試験液への金属イオン溶出は大きな課題だ。この解決策として、JFEテクノリサーチは、接液部に金属を一切使用しない「金属フリー構造」の水電解評価試験装置を開発した。
JFEテクノリサーチは2026年9月3日、グリーン水素製造技術の研究開発を支援する「水電解評価試験装置」の販売を開始すると発表した。
カーボンニュートラルの実現に向けて、水素エネルギーへの期待が高まる中、水電解による水素製造技術の研究開発が世界的に活発化している。水電解とは、電気を利用して水を水素と酸素に分解する技術だ。再生可能エネルギー由来の電力と組み合わせることで、CO2を排出しない「グリーン水素」の製造手段として注目されている。
こうした開発を加速させるためには、材料や触媒の性能を正確に評価できる試験環境が必要だ。しかし、従来の水電解評価試験では、配管や接液部に使用される金属材料から溶出した金属イオンが試験結果に影響を与える場合がある。さらに、プロトン交換膜(PEM)水電解では電解質膜の劣化促進要因となる可能性が、アニオン交換膜(AEM)水電解ではアルカリ環境下での金属腐食が懸念されている。こうした背景から、より高精度で再現性の高い評価環境が求められている。
そこでJFEテクノリサーチは、水電解関連の受託評価試験を通じて蓄積した技術とノウハウを活用し、顧客自身による評価試験を支援でき、研究開発のスピードアップに貢献する水電解評価試験装置を開発し、商品化した。
水電解評価試験装置は、水電解単セルに対して電流、電圧、温度、流量などの条件を精密に制御しながら電解性能評価を行う試験装置だ。単セルとは、水電解装置を構成する最小単位の電解反応セルで、触媒、電解質膜、電極、ガス拡散層など部材の性能評価や、セル構造の最適化検討に用いられる。今回の装置は、部材開発の初期段階から実用化を見据えた長期耐久試験まで一貫した評価環境を、顧客の自社内に構築できる。
同装置の最大の特長は、試験液が接触する配管や流路などの接液部に金属材料を一切使用しない「金属フリー構造」を採用していることだ。これにより、金属イオンの溶出による試験への影響を抑制し、触媒、電解質膜、電極、ガス拡散層など部材本来の性能を高精度に評価できる。なお、セル本体は金属製となっている。
また、PEM形だけでなくAEM形においても、金属腐食や不純物混入の影響を低減し、信頼性の高い評価環境を提供する。
太陽光/風力発電などの変動電源との連携を想定し、起動/停止を繰り返す間欠運転条件での評価が重要視されていることを踏まえて、同装置は、ポテンショスタット(電位制御電源)をオプションとしても設けた。これにより、PEM形水電解セルの起動停止模擬試験にも対応可能だ。実用環境を模擬した条件下で劣化挙動を把握し、材料選定や設計最適化に活用できる。
加えて、柔軟性が高く評価できるマニュアル仕様から、効率的に評価を進めるプログラム制御仕様まで、開発ステージや評価目的、予算に応じた装置構成にも対応する。背圧制御(セル内部に圧力を与えた状態で評価する機能)などの機能追加にも対応し、研究開発フェーズから実用化検討まで幅広く利用できる。
同社では、装置導入後も、試験条件設定などの技術サポート(有料)や、溶液/部材の分析、評価などの受託サービス(有料)により、研究開発を継続的に支援する考えだ。
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